ぼさー

消えない虹のぼさーのレビュー・感想・評価

消えない虹(2022年製作の映画)
4.0
未成年殺人加害者と家族、被害者遺族の心情を提示し、それぞれの人物に自己投影して考えられるように工夫された作品。

複数の別々の暮らしをしている登場人物たちが描かれるものの関係性がわからないところから物語は進行していく。女生徒の死によって二つの家族の関係性が結びつき、そして過去の未成年殺人の物語へと展開していく。

登場人物達の関係性や言動の謎を解いていくことで徐々に各々の人物像を理解していけるように工夫されている。演劇のような構成で凝った脚本と演出だった。

****
壊されてしまった人生、狂ってしまった人生を受け入れて前に進むには、壊した/狂わせた張本人の人生の理解も必要という考え方に基づく内容だと思った。ずっと不可解であると、加害者をどう扱い結論づけていいかわからず、もやもやとして残りつづけていくという描き方がされていた。
そして加害者を憎み続けていいのか、逆に憎むという負の感情をやめられるのか、そういう割り切れない悩みをずっと抱えて生きていくことの苦しみが描かれていたように思う。

あくまでフィクションの物語なので単純化された結末に向かっていき後味良い仕上がりになっている。それは物語の仕上げの話であって、それよりもそれぞれの登場人物に自己投影しながら自分事として事情を捉えてみるのが有意義だと思った。そういうことが可能な演出と構成になっていた。

****
ハルカトミユキさん(ミュージシャン※劇中主題歌)、島田伊智郎監督、俳優陣:猪爪尚紀さん 星川祐樹さん 裕樹さん 平山さとみさんのトークとミニライブ付き上映を鑑賞。

劇中では不幸そうなオーラを纏った男性達が登場していたが、演じていた俳優さんたちは不幸そうな雰囲気はまったくなく、演技や演出の力なんだと感心した。
ぼさー

ぼさー