ssI

グッドバイ、バッドマガジンズのssIのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

冒頭のナレーションをみて、そういえばエロ雑誌って見かけなくなったなぁと。コンビニでも堂々と置いてありましたし、それがなくなるって聞いてから、そして実際になくなってからも随分と経ったなぁと。自分で買ったことすらなかったけどもなんだかノスタルジー。

自分は"編集部"への憧憬が子供の頃からあったし就活時は説明会も聞きに行った。加えて本作はサブカル・アングラなものへ興味もある自分としてはすごい楽しめた。

全編通して斜陽産業の哀愁と、廃れていくものへの郷愁って感じの雰囲気を纏っている。そもそもが雑誌文化自体もネットの台頭とあいまり衰退気味なので、アングラ雑誌なんて言わずもがな。作品内でもエロ雑誌はAVの包装品なんて表現されてる。たしかにわざわざ女優読んで撮影してまで得られるメリットは現代にないよなぁ。しかしこの辺の退廃的な雰囲気がなかなか個人的には気持ち良くて、何気なく見たにしては儲けたと思えた作品。

前半は女性主人公が入社し、エロ雑誌に困惑しつつも成長していくさまを描く。初めはシュレッダー係として働きつつ傍に置かれたディルドに驚くなんて場面があるのだけど、この辺で「きゃー、おちんちん!」みたいな、邦画にありがちな(偏見)オーバーな演技・演出がなく、ただ唖然とするのが現実的かつオシャレでよかった。その一方で、すっかり慣れきった主人公が後輩の誌面を添削する場面では、さながら雑誌の見出しのようなフォントでオーバー気味に画面を埋め尽くすさまは腹を抱えて笑った。

ちょっと考えさせられたのは後半のセックス編。エロ雑誌は廃刊に疎まれ追いやられてるけど、セックスは基本みんな好き。開けっぴろげにはされないがホテルは街中そこら中にあって、もはや日常と化してる。顕在してるのに隠蔽されていると言う矛盾。この辺に切り込んでいくのは感心したが、いまいち着地点が定まらずフワフワと宙ぶらりん。挙句、「みんなセックス好きだよね」という結論。うーん、まぁそうなんだけど…もうひとおし欲しかったなぁと。
まさかの展開で度肝を抜かれた。いやあの元カメラマンは好き放題やりすぎだろと思ってたからちょっとすっきり。ただ哲学的なセリフが少し説明的にも聞こえてこの辺は蛇足じゃないかともおもった。
ssI

ssI