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エゴイストのchiのネタバレレビュー・内容・結末

エゴイスト(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

監督のティーチイン付き試写会に参加させていただきました。

良い意味で予想と違った作品だった。タイトルから勝手にエゴを押し付けて衝突する恋人の話かと思っていたが、もっと深いものを描いた作品だった。
また、本作はゲイを主人公にしたLGBTQ映画であり、BLドラマなどは多く作られるもののLGBTQを真摯に描いた作品はまだ多くない邦画界において貴重な作品。前半はベッドシーンも多く、また当事者も多く起用されており、この作品に挑んだ俳優2人、そして監督はじめスタッフが真摯にこの題材に向き合い本気で作ったことも伝わった。

浩輔の行動については正直、やりすぎじゃないか?これはエゴじゃないか?と思いながら見ていたが、龍太が亡くなってからの展開にはひどく考えさせられるものがあった。
本作の主旨とは異なる話になると思うが、後半、私はかつて見た「親愛なる君へ」という台湾映画を思い出していた。この作品は、ゲイの主人公が、亡くなったパートナーが残した子供と母親の面倒を見る話である。この作品の中で、偏見丸出しで批判してくる周囲の人々に、主人公は「夫を亡くした妻が夫の子と親の面倒を見ていても同じことを言えるのか」と問う。結婚している夫婦の場合は普通のことなのに、同性愛者になると別だと捉えるのは何故だろう?大切な人の大切な家族を大切に思うことに同性愛も異性愛も変わりはない。

台湾LGBTQ映画を思い出したとはいいつつ、本作は主人公2人がゲイであることを過度に強調しない。LGBTQ映画と括られがちだし私自身も括ってしまっているが、本作はゲイを特別視するわけでもなく、彼らがありのままに存在している。
この作品で描かれたカップルが同性であるだけで、描かれたものは「親愛なる君へ」とは異なりLGBTQ云々ではない。愛や人間関係を描いている。

エゴか愛か。受け取った方が愛と感じたら愛。その通りだ。妙子の温かさ、葬儀場、自販機の前での浩輔の慟哭が胸に迫る。

ヒューマントラストシネマ渋谷にて。
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