心の奥底がズキズキと痛みを感じる。
ゲイ男性たちは何も悪いことなどしていないのに「ごめんなさい」という言葉を繰り返す。
痛々しく純粋な愛の姿に何度も涙。
全編をとおして悪意のある人やあからさまなゲイ差別の描写はないが、ゲイの生々しい苦しさが画面から伝わってきて胸が苦しくなる。
ドキュメンタリー風の撮影方法が、よりリアルにゲイの人生を観客に体感させる。
差別を理由に捨てた故郷、ゲイコミュニティだけで本当の自分をさらけ出せる偽りだらけの毎日。
悲しくても自分の心に正直に泣くことさえできない苦しさなど、心がえぐられるようなシーンもある。
純粋にパートナーと出会えたすばらしい体験とその母親との関係性など男女の普遍的愛の物語としてでも描けそうだが、やはりゲイの物語として描いたことで全く違う意味の映画になっている。
鈴木亮平の演技は最初はオーバーアクトかなと思えたが次第にリアリティを増していく。
自分の愛情に純粋に正直になるほど自分自身をエゴイストとして責める悲しい姿を見事に演じている。名演。
やはり彼も「ごめんなさい」しか言わない。
しかし彼が「ありがとう」と言える(思える)姿はささやかな救いかもしれない。
日本の大手映画会社がしっかりと作ったゲイ映画として記念碑的作品になると思う。