極めて純粋な恋愛映画。
とは言え、年の離れた二人の男性が惹かれ合い、そうなるまでのゲイカップルにおける「能動×能動」的なリアリティーが剝き出しです。ただし過激な性的描写とは対照的に登場人物の悠揚とした心情の流れはとても丁寧に描かれています。
また親には打ち明けられず「男」を演じなけらばならない葛藤や、居酒屋で騒ぐゲイコミュニティー内でのオープンな姿まで、寄りに寄ったカメラワークの演出効果も重なりドキュメンタリーを観ているような錯覚を覚えます。
ストーリーは恋愛からある出来事をきっかけに別のテーマを持ち始めます。その中で相手を慈しむが故に自我を押し通そうとする姿、そしてラストシーンである人物が「帰らないでほしい」と懇願する様。本来「エゴイスト」という言葉が持つ意味ではない、利他の中の利己（のようなモノ）に帰結する愛情に満ちた作品です。
ただひとつ難癖をつけるのであれば、意図的と思えるほどカット割りが淡泊です。感情的な場面でも余韻なく、次の場面に展開するスピードと物語の持つ静謐さに若干の違和感を感じました。
