エゴイストのはろのネタバレレビュー・内容・結末

エゴイスト…最後にタイトルが出るタイプの映画の中でもかなり響いた。想像していた以上に深く、他人との関係の中で生まれるエゴと愛を上手く描いていた。

ワンシーン目から鈴木亮平の演技に唸らされた
ただ歩いてるだけ、目線とか手の仕草、振り返る動作、さりげない動きによって揺るぎないキャラクター像を作り上げてて本当に感心してしまった。

田舎出身でブランドを身に纏い、リアリスティックに生きている浩輔は、母の死とその後の父との生活が彼に与えた自律した精神、龍太へのエゴイスティックな愛などによって逆に彼の孤独感が際立っていて切ない。
モダンな雰囲気の部屋に不釣り合いなアンティークの家具だったり、全然音楽が無かったり、部屋に1人でいるカットや後ろ姿のカットが多いのも彼の孤独感を演出していると思った。

宮沢氷魚も、年下の男の子っていうかわいい笑顔が印象的なキャラでとても良かった。
正直高卒でもあんなしっかりしてるなら働き口いくらでもあるだろうに…て思ってしまった。
龍太は過労死だったのか？体が弱いと母親が言ってはいるが、そう言った描写は全くなかったしまさかそんな展開になるとは思ってなかった。
最後まで龍太の部屋の全体が映らないのは浩輔とは対照的で、働いてるシーンを多く映すことで、彼のひたむきさや母に対する自己犠牲的な(ある意味エゴイスティックな)精神を強調している。
龍太にとって浩輔は精神的にも経済的にも余裕があって、自由な生き方をしている理想の生活をしている。
2人の肉体関係という直接的な愛情表現を見せつつも、龍太の金を稼ぐための行為も同時に映していることで、その後の2人の関係性と対比される。

浩輔は心の隙間を、龍太を献身的に支えることで安定させていたのかもしれない。
そして龍太の死後は彼の母を支えずには精神を安定させられなかったのだろう。
それは本当に愛から来ているのか？と本人は葛藤しつつも、エゴは受ける相手からすれば愛にもなるし、愛になっているのならそのエゴは悪いものではないと、愛を返してくれる母親に出会えたのは彼にとっては幸せだと思う。
龍太も母親も浩輔もお互いがお互いにエゴな感情と愛情とを抱えている。それがうまく表現されており、ラストシーンもとても良い終わり方だと思った。