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女囚さそり けもの部屋のryotaのネタバレレビュー・内容・結末

女囚さそり けもの部屋(1973年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

こちら、伊藤俊也監督作品としては最後で四作目は監督もスタッフも変わってしまったので、一応こちらが第一期完結編と認識してます。最後に出てくる文言もそんな感じだし。梶芽衣子さんと監督の確執は致し方無いところもあるにせよ、梶芽衣子さんの「監督とスタッフを変えなければ次回作には出ない」と言い切った強い意志は尊重するしかありません。ほんと、役や作品に対する強い信念とはっきり伝える意志は素晴らしく、それが松島ナミに通じるところも感じて、ますます梶芽衣子さんのファンになってしまった記憶があります。

こちらの「けもの部屋」は牢獄が舞台ではなく、ナミが脱獄した外の、言ってみれば東京(ですかね)が舞台になっているのが大きな特徴です。いきなりの電車シーンで、手錠かけた刑事の腕を切り落として、墓地でギリギリと墓石に手錠を擦り付けて切り落とそうとするシーンはあまりにも有名なショッキングシーンでしょう。都会(けもの部屋)での風景は虐げらた女たちだらけで、そこは監獄と変わらないイメージです。ただ、近親相姦とか痴呆(事故で頭がおかしくなった設定)とか、妊娠堕胎とか、ちょっと悪趣味とも言えるシーンのオンパレードになっていき、ちょっと嫌悪感さえ覚えます。そんな女性の恨みを背負ったがの如く反撃に転じるナミっていうのは、ちょっと違和感というか行き過ぎというか、その辺りちょっとずれ始めてしまったのかなあという印象です。いずれにしても、圧倒的な存在感の松島ナミ(相変わらずほぼしゃべりません。書き忘れましたが、そういうキャラにしたいと申し出たのは他ならぬ梶芽衣子さんだそうです。キネマ旬報のインタビュー記事で見ました。やっぱすげえな梶さん!)と独特の映像の切り取り方は相変わらずで、一気に引き込まれてしまうんです。後半の下水道を逃げ回るところとか、ガソリン注入して火炙りにしようとする警察たちは、さすがに非現実的になってしまってちょっとエンタメに寄りすぎたかなと。監獄って基本的に閉鎖されている世界だから、なんでもありなこともリアリティあるのですが、都会の真ん中でマンホールにガソリン入れて火をつける警察ってなるとちょっとおいおいって思っちゃいました。でもまるでターミネーターみたいな松島ナミ(!)はもろもとせずに、復讐に立ち上がるのでした。っておい!

ラスト、連続殺人犯松島ナミがなんでか放火で三か月の刑で留置される(設定ミスってない?)のですが、怪人(にしか見えない)李麗仙のチキンっぷりが見事にバカで、妄想で間違えて刑事殺しちゃう、最後までトンデモ展開をやり通してエンドを迎えた作品。いずれにしても十分楽しいです。このシリーズ三部作、できれば名画座で3本立てとかで一気見したいですねえ。暗い映画館で見るのがおすすめですよ絶対。
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