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カムイのうたのMASSUのネタバレレビュー・内容・結末

カムイのうた(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

作品の主題は大きく二つあると思う
一つは「差別解消」
また一つは「文化継承」である
差別については終始付き纏う存在として克明に描かれていた
倭人によるアイヌ民族への差別偏見、または暴力行為というものが実際どれほど酷いものであったかは私もごく一部しか知らないため劇中での描写の加減を指摘することはできないが、作品からわかることは、現代に生きる私たちにとっては想像を超越するほどであるということだ
文化継承については、倭人とアイヌの関わりの中で、「ユーカラ」を通してその大切さが表現されていた

北海道の優美な大自然の映像から始まり、凍てつくような厳しい環境で必死に生きる動物たちの様子には深く感動を覚えた

テルの叔母さんがユーカラを歌うというシーンが2、3度ほどあるが、いづれも翻訳された字幕が無いことに違和感を覚えた
ただしこれは、「意味が知りたい」という欲望を満たすことを敢えてここではしたくないという監督の思惑があるのではないかと推測する
劇中で字幕を入れずに何度もあのメロディーを聴かされれば、自然と私たちはその歌に興味をもってしまうはずだ
表現したいものや答えを全て映画の中に閉じ込めるのではなく、謎や興味を残すことで上映終了後に観客自らが調べようと思うような仕掛けがある
すなわちこの映画の目的は、さらに観客に向けてアイヌ文化の継承をすることではなく、観客が家族や友人、恋人に文化を伝えていくよう仕向けることではないか
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