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ブリティッシュ・ロック誕生の地下室のKKMXのレビュー・感想・評価

3.7
 60年代初期における、イギリスにブルースを根付かせた人たちやライブハウス『イーリング・クラブ』のドキュメンタリー。面白かったが情報量が多すぎて観るのがなかなか大変でした。


 これまで、ロックはブルースの影響を受けているから、チャック・ベリーやエルヴィスと同様にブルースも人気があったんだろう、くらいに考えていましたが、50年代後半〜60年代初期のイギリスでは、ブルースはどマイナーな存在だったようです。アレクシス・コーナーやシリル・デイヴィスといったオリジナイターがライブできるハコを探したりしながら、少しずつジャンルを根付かせていったことが本編では描かれていました。
 マディ・ウォーターズらのブルースミュージシャンが50年代後半にイギリスでライブを演っていたのも、ラモーンズがイギリスツアーした後にロンドンパンクが勃興したような流れが見えて、やっぱりツアーはデカいな、と思いました。
 また、この時期はエレキギター黎明期で、ブルースは爆音の音楽だったようです。今では渋いイメージですが、いわゆるラウドミュージックとして捉えられていたのかもしれません。

 アレクシスらのハコであるイーリング・クラブはブルースのメッカになり、ヒップな若者が集って文化を形成していきます。アレクシスの初期のバンドにチャーリー・ワッツ先生が在籍していたのも、イーリング・クラブの濃さが伝わります。そして、お馴染みのストーンズもこのハコで生まれたようです。
 ミックはブルースの曲をなんでも知っていたとか。このエピソードを聞いて、ミックの歌のヘタさの背景がちょっと理解できました。何故アイツはソウル好きなくせに歌がド下手なのかナゾでしたが、ブルースだとゴスペル的な歌い上げを必要としないので、上っ面を真似ていくと歌が上手くなんねぇだろうなと想像できました(実際、ブルースメンはみんな歌めちゃくちゃ上手いですけど)。ミックはラップとか語りみたいなのは上手いので、トーキングブルースとか、そういうのを熱心にコピってたのかもしれません。
 本作には、なんとローリング・ストーンズのベーシストが登場します!我々が想像するストーンズとベーシストといえば……ベースの角度を上げたのはその夜セクロスする相手を客席で物色するため、13歳とセクロスしてドキュメンタリーが日本で上映どころかDVDスルーも配信もされないという人類最悪のクズを連想しますが、ディック・テイラーさんという、人間的にデキた感じの紳士でした。テイラーさんはギターをやりたいためストーンズを脱退したとのこと。確かにブライアンとキースがいればなかなかギター転向は難しいですからね。しかしまぁ残念な話ですよ。ディックさんが脱退しなければ、デカいベースアンプ持っていただけでバンドに加入できたロック界イチの一杯食わせ者を歴史から抹殺できたのに!重ね重ね残念だッッ!


 60年代のロンドンの状況も興味深かったです。戦争が終わり、好景気で10代がカネを持ち始めて消費者になっていく流れは50年代アメリカのロックンロール誕生と軌を一にします。新たなカルチャーが生まれる背景は、だいたい文化的な発展や変容があります。俺は基本パンクが好きなので、イギリス=不景気というイメージでしたが、これは70年代後半なんですよね〜、イギリスも昔は好景気だったのか、となんとなくムカつきました(俺はずっと不景気を生きてきたので好景気が嫌い)。
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