シズヲ

ロッキーVSドラゴ:ROCKY IVのシズヲのレビュー・感想・評価

ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV(2021年製作の映画)
4.0
「リングで2人の男が殺し合った」
「だが2000万人が殺し合うよりはマシだ」

1985年公開のロッキー4、数十年の時を経てまさかの復活!!42分もの未公開カットを使用!!スタローン自ら再編集した真・ロッキー4だ!!これだけ場面を追加しているにも関わらず、上映時間は旧版と殆ど変わらない辺りに差し替えの顕著さが伺えて面白い。旧版は明らかにスタローンの政治性が中心だったが、此方はよりドラマ部分が増えている。自分の中でだいぶ評価が低かった旧『ロッキー4』から格段に面白くなってるので脱帽。

旧版と比べて明らかにアポロの存在感が大きくなっていて、冒頭から『ロッキー3』のダイジェストが流れるのでロッキーとアポロの関係性が強調されている。そこから本編においてもアポロの描写が旧版よりも桁並み強化。全体的には従来のロッキーシリーズと同じく簡潔な掘り下げに留まっているものの、よりロッキーとアポロの友情に感情移入できる構成になっている。葬式でロッキーが自責の念を吐露する場面は印象的。映画の軸である「“ロッキーVSドラゴ”へと向かう高揚感」「その根幹にあるロッキーとアポロの友情」がちゃんと打ち出されている時点で旧版より明確に勝っている。あと旧版でのアポロの瞬殺ぶりを思うと、アポロVSドラゴのシーンがけっこう増量されたのが嬉しい。

アポロとの友情の補完に伴ってロッキーとエイドリアンの描写も増えており、二人の愛情もまた旧版よりも印象深くなっている感。旅立ちの前にロッキーが息子に語りかける場面が追加されてるのも何だかしんみりする。そして旧版では戦闘マシーン以上の立場を感じられなかったドラゴの人間味が補完されているのも印象的。台詞も含めて目立った改変がある訳ではないけど、それでも「国家の代理戦士に仕立て上げられた男」としての孤独が掴みやすくなっている。そのおかげで終盤の「俺自身の為に戦う」という宣言の意味合いが強まっているのが良い。

尺自体に大きな変化は無くとも、構成や編集にメスを入れたことでドラマ部分の説得力が(旧版と比べれば)しっかり増しているのが好感。ドラマ部分がより端的になっているので、94分ゆえのテンポの良さもちゃんとシナジーを発揮している。MV風演出は相変わらず鼻に付く感じは無くもないが(ジェームズ・ブラウンんとこは馬鹿馬鹿しくて大好き)、主軸となる物語が強化されたことで幾分か許せるような気がしてくる。ラストの台詞が「俺たちは分かり合える」じゃなくて「人は変われる」になった辺りは色々と含みを感じる。あと例の謎ロボットがまるまる消えててしみじみした。
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