米ソ冷戦を背景にソ連のボクサー、イワン・ドラゴにアメリカン・ヒーロー、ロッキー・バルボアが勝利するというある種のプロパガンダ映画だった怪作「ロッキー４」。大らかな80年代PV風の作品として愛されてはいるが決して評価が高いとは言えない。しかし、新たに編集をした「ロッキーVSドラゴ」はキャラクターそれぞれの感情の流れが明確になり、優れた作品に生まれ変わっていた。物語はロッキー3でのロッキー敗北後から始まる。ロッキー復活の為にコーチを申し出たアポロ。そこで語られるアポロが敗戦した時の失意、失った「アイ・オブ・ザ・タイガー」の話がアポロがドラゴと戦う為に復帰を決意した理由に繋がる。決して譲れないファイターとしての生き方。アポロの命懸けの戦いの唐突性が無くなった。そしてこのアポロの魂がロッキーの戦いに継承されていくのだ。更にそれが氷の様なドラゴの心をも溶かしていくという一本芯の通ったテーマになっていた。またエイドリアンがより深く描かれていたのも印象的だ。夫婦の信頼を描くシーンが多くなった事によりエイドリアンの葛藤がより深く感じられた。人々の思いを背負ったロッキーの戦いに心動かされた。
