くまちゃん

ロッキーVSドラゴ:ROCKY IVのくまちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

コロナ禍で落ち込んだエンタメ市場のさなか、不撓不屈のハングリー精神で伝説は帰還する。
彼の名はシルヴェスター・スタローン。
コロナで暇すぎて未使用フィルムを再編集した所、またもや名作を生み出してしまった。
映画産業の衰退が危惧される昨今において、公開日の延期や映画館の運営自粛、感染症対策への設備投資など、コロナの打撃は相当なものだったはずだ。
まさかこんな副産物が発生するとは誰も想像していなかったであろう。
時に世界を揺るがす大きな発明は何かしらの副産物として出来上がることが多い。スタローンは発明家でもあるのだ。

なぜアポロとドラゴが戦うことになったのか、なぜボクシング協会はロッキーvsドラゴを許可しなかったのか、オリジナル版においてあまり触れられなかった部分が今作ではハッキリと描かれている。

アポロの葬儀の場面でロッキーはサングラス越しに涙を流し、アポロへの愛と感謝を述べる。アポロの死への自身の責任も提示され、彼の絶望に深みが付与される。

ドラゴとの戦いを決意し、反対するエイドリアンと意見が割れるロッキー。
ソ連へ旅立つ前にもう一度ロッキーとエイドリアンの話し合いが設けられている。
家の外からポーリーのメーターがあがるというガナリ超えが聞こえることから別アングルで撮影していたのかもしれない。

ドラゴの表情はオリジナル版と比較しても人間らしくなっており、今作のほうが温かみがある。

ロッキー4でのプロパガンダ要素がだいぶ削がれ、ヒューマンドラマへシフトチェンジした印象がある。
おそらく、公開前に様々なシーンを撮影し、どの場面を繋ぐかスタローン自身迷ったのだろう。
映画作家として確固たる地位を築いた今だからこそ可能になった、もう一つのロッキー。
ストーリーは同じなのに編集でここまで別次元に化かすとは。鍛えていたのは筋肉だけではなかったということか。
そのブラッシュアップされたセンスは、ポーリーのドラム缶夫人が全カットされた部分からも読み取れるだろう。
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