まーしー

映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)のまーしーのレビュー・感想・評価

4.0
空の楽園「パラダピア」を舞台にした、ドラえもんたちの冒険物語。映画シリーズ第42作。

誰しもが憧れる夢の楽園。競争のない牧歌的な世界は魅力的に映る。
でも、果たして楽園生活は本当に幸せなのだろうか?——そのような疑問を投げかけている本作。

怠け者ののび太、強情っぱりのしずかちゃん、意地悪なスネ夫、乱暴なジャイアン。
いずれもその人の欠点と言えるだろう。
しかし、それぞれに欠点があるからこそ、人間味を感じられるというもの。誰しも完璧な人間であれば、金太郎飴のようで面白みがない。改めて個性の大切さを認識させられる。
“隣の芝生は青く見える”という言葉があるが、まさにその通り。羨ましいと感じる他人にも苦労や苦悩があるわけで、パーフェクトな人間など存在しないだろう。
本作は、そのようなメッセージを明確に描いた作品だと思う。

ゲストキャラクターのソーニャが、なぜパーフェクト猫型ロボットなのか。
そのソーニャがなぜドラえもんとのび太に大笑いしたのか。
冒頭で、のび太のところに、なぜ虫が寄ってきたのか。
この辺りが終盤への伏線となっている脚本も素晴らしい。

空の楽園という壮大なSF世界を舞台にしながらも、「人間の個性」や「友情」という身近な問題を扱っている本作。単なる空想アニメで終わらない魅力があった。
また、最後にウルっとさせられるストーリーは、完全オリジナルの脚本ながらも秀逸だと感じた。
これまで観てきたドラえもん映画の中でも、個人的には上位にランクインする作品。
ぜひ、劇場で。