くま一家

映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)のくま一家のレビュー・感想・評価

3.1
二男と子供達の多い劇場で鑑賞。
「自分らしさ」と「(外から求められる)完璧」とどっちが大事?という、子供達ばかりか大人も直面するテーマについての意欲作だと思いました。二男は面白かったそうなので良し。
ゲストキャラの声を当てたあの方のファンの方にとっては、本筋とはまったく別に、ある種の感慨を受けるかもと思ったので、オススメかもしれません。












以下、所感としてネタバレ込みで感想。













 

…が、上映中一度も笑い声が起こりませんでした…。

なんだか全体的に、「そういうことじゃないんだよな…」って鑑賞しながらずーっと感じ続けた気がします。

パーフェクトを求める三賢人とパラダピアの住人達。それに順応していくいつものメンバー達。パーフェクトを最も希望したのび太が、最もパーフェクトに近づくことに苦労し挫折する。「パーフェクト」に対する違和感(パーフェクトとは心を失うこと)に気づいたのび太であるが、なぜのび太だけがパラダピアンライトの影響をはねのけられるのか、「のび太らしいことの強さ」とは何か、の描かれ方が不明確なので、なぜメンバー達のライトの影響を解除し得たのかが唐突に感じた。ただのび太が叫んだだけ?「スネ夫は意地悪だけど…」「しずちゃんは強情っぱりなところあるけど…」と説得するのび太の心意気とリフレーミングが、彼ららしさを蘇らせた、と言うにはやや描写が乏しいかな…。本作における「自分らしさとは何か」「パーフェクトより欠点やダメなところまで含めた自分らしい方が強い(尊い)」というテーマが描ききれていないように感じてしまった。

序盤からの導入は良く言えば丁寧。悪く言えばテンポが悪い。最終的なタイムリープ的な展開に必要な積み重ね(伏線)であったのかも知れないが…。ドラえもん映画であり、どこかで笑いを求めていたのですが、劇場はずーっと静かでした。

ゲストキャラのソーニャを演じた永瀬廉。声優としては十分及第点かな。
ドラえもんがなぜソーニャを「友達だから」と言ったのかが描写不足なので、最後のソーニャの展開が唐突に感じた。「僕達猫型ロボットは人間と友達になる為に生まれてきたんだから」は(百歩譲って)分かるとしても、ソーニャがドラえもんとの間に友情が芽生え確信するまで過程が薄くないかな…?パトロールしながらたくさん話をしていたの??
ただ…ソーニャとメンバー達との別離のシーンの台詞には、永瀬廉個人的な(彼自身とグループの今と今後に対する)感情が含まれているように思ってしまい、感慨深く感じました。

インスタント飛行機セットやタイムツェッペリンやパラダピアの科学技術など、メカ描写については文句なし。
いつもよりしずちゃんスネ夫ジャイアンの見せ場が少なかったとか、あれだけ堅牢なパラダピアの防護をどうやってマリンバは突破できたのか?など細かい部分を言えば切りがない。
大事な気持ちを説明台詞で口に出しすぎ…。特に元の暮らしに戻った後のラストシーンまでののび太の台詞とか。説明的すぎる…。

洗脳をベースにした「パーフェクトが善」とする価値観を盲目的に信じる世界は理想郷(ユートピア)たり得ず、「自分らしいことが善」とする価値観のみを理想的とする主張がかえって洗脳っぽくて、宗教的にすら感じられる本作。

藤子先生ならこういう話にはならないんじゃないかな…って(勝手に)感じるシーンや台詞が多くて、「なんか違う…」って印象が積み重なる鑑賞体験でした。

(この文章に何度となく登場した「…」が一番気持ちを表している気がする…)
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