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映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)のKHのレビュー・感想・評価

2.0
まず前提に「映画ドラえもん」は子供の為に作られた作品であり、大人は"楽しませてもらっている"という感覚を忘れてはいけない。
だからこそ、ハッピーエンドで良いし勧善懲悪で良いし、そうでなくてはならない。
その上でレビューするなら今年は物語の完成度は確かに高い。
ユートピアの不気味さや、競争や能力や格差を是正して何よりも「平等」であろうとするパラダピアは、考えすぎか共産主義の共同体コミューンを連想させる。
それに対して能力や格差を「個性」とするのび太は構造的に共産主義と資本主義の対立構造になっている。
今の"ご時世"を配慮したと思われてもおかしくないだろう。
また藤子・F・不二雄の精神の通り、パラダピアも矛盾のないSF(SFマニアの人に怒られるかも知れないが)設定がなされている。
このような点に置いて確かに完成度やテーマ性は高く映画として評価されるかもしれない。
しかし、ひみつ道具のデザインや物語のテンポ(分かりやすさ)も含めて、過去作より感覚的だがワクワク感が少なかった様に感じた。(アニメ版の監督の方が今作を手掛けたこともあり、通常のアニメ版と変わり映えがなく、映画特有のワクワク感が少ない。)
この映画の気に入らない点は「大人向け」の視点を明らかに意識しており、そのせいで物語自体が子供からして少し退屈になっている点だ。
勿論両方備えている方がベストだし、藤子・F・不二雄の原作にも大人向けと言われる作品は幾つかある。
しかしF先生なき現在、特に「映画ドラえもん」は皆のものであり、皆の愛すべきドラえもんは公共財産だと思っている。
邪推だが、今作の脚本は脚本家として名のある方で、完全に子供にシフトした作品を作ることに少し抵抗があり、自身の作家性を出したのかったのかもしれない。
その点で「月面探査機」とは大いに違う。
実際レビューでも「大人向け」という声や「子供向けと侮ってはいけない」という肯定的なものが多い。
ドラえもんは子供の為にあることを忘れてはいけないと思う。
KH

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