ピロシキ

そばかすのピロシキのレビュー・感想・評価

そばかす(2022年製作の映画)
3.1
『ドライブ・マイ・カー』でタバコを吸い車を乗り回していた三浦透子になにやら無性別的な魅力を感じて「ヨッシャ、コレで一発当ててやろう」と製作側が思い立ったか。そうですと言われたら浅はかだと返したくなるし、そうではないと言われたら嘘つけとも返したくなる。「LGBTQ+映画」というざっくりとしたカテゴライズも一般化した昨今だが、この作品がその中で頭ひとつ抜けることはないだろう。首を傾げたくなるような展開がノイズになって、すっかり気が散ってしまった。

保護者も見に来るような発表の場にもかかわらず、物議を醸す「デジタル紙芝居」を本番まで上長がいっさい確認しなかったのは何故か。「うわっ、AV女優やん!」とスマホを構えるほどの下世話な根性はあるくせに、わざわざ地方議員候補の街頭演説に熱心に聞き入っていたあの若く善良な有権者たちは何者か。

それ以外にも、合コンで面白いことの一つも言わないくせにイチモツだけは元気なチャラい男、ゲイであることを告げる保育士の男、サブカル好きの無礼なイケメン後輩男。ものすごく記号的で、都合よく配置されたとしか思えない男たちである。主人公が音大卒のチェリストであることや、かつての旧友がAVに出ていたことも含めて、物語を動かすためにはたいして必要とも思えない情報に埋め尽くされて、迷子になってしまった。幼稚園児みたいに「なんで〜」って言っちゃいそうになった。

とはいえ、主演俳優も脇を固めるキャストも皆すごく上手だな〜と思いながら最後まで観られたのは良かった。なんだかんだで魅了されたのは役者のパフォーマンスばかり。結局シンデレラは最後どうなったのか、それぐらいは教えてほしかった。
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