ゆりな

そばかすのゆりなのレビュー・感想・評価

そばかす(2022年製作の映画)
5.0
今年のベスト1、これまで観た邦画の中で文句なしのNo.1です。

まず全てがよかった。終始クスクス笑えて、私たちの生活覗かれてる?っていう、ビデオを見ているようなテンポ。でも人生ってその連続じゃん。
邦画あるあるの無駄なシーンが1秒もないんだな、この映画。

「(not) HEROINE movies」の第三弾。まず、そのコンセプトがいい。小さい頃からディズニープリンセスだの、アニメの主人公だの、無意識にヒロインを押し付けられてきた私たち。
「30歳までにとうるさくて」しかり、アラサーになると友達もステージが変わったり、周りの声がうるさかったりして。

三浦透子さんって26歳なの!?「ドライブ・マイ・カー」と言い、存在感ありすぎて。
羊文学の塩塚モエカちゃんの書き下ろした曲は、三浦透子さんが歌っても「羊文学」だったし、この映画のタイトルが「風になれ」だったら寒かったけど、「そばかす」だからいい。

主人公の蘇畑佳純(三浦透子)は略すと「そばかす」だけど、劇中誰もそう呼ぶ人はいない。
「そばかす」って「意味をもたないもの」の象徴だと思う。遺伝だったりできやすい人はいるけれど、選択することはできなくて、あってもなくてもいい。人それぞれ。

主人公の佳純もまさにそうで、恋愛感情がわかないアセクシャルだけど、過去のトラウマで……とかじゃなく、自然とそうなったもの。そばかすと同じで、自然とできたもの。
ただ楽しく生きているし、人生に窮屈さも感じていない(だから自分のご機嫌を取るのが上手い)けど、そうは行かないのがアラサーなんだよね。笑

私の一番古い友達にもアセクシャルの子がいて、少女漫画が大好きでキュンとするけど「少女漫画は勝手に恋の仕方は教えてくれるけど、恋の落ち方は教えてくれなかったもん!」って言ってました。本当よね。

佳純がモテる理由もわかるよ!伸び伸び好きなことをしているから魅力的で、人に対して余裕もあって、でも流されにくくて。
恋愛経験がなくたって、こんなの男女逆でもモテてしまうでしょ。(笑)
でもその魅力は、恋愛感情がわかないから成り立っている部分もある。私だって恋をしなかったら、嫉妬も執着も、覚えなかったはずだ。

一応季節に注意して見ていたんだけど、これ何ヶ月くらいの出来事なんだろう〜。長くても1年なはず。
佳純が1年を振り返るとしたら、そりゃ自身の結婚とか大きなイベントはなくても、転職やら再会やら友人の門出やら、大きな1年だったんじゃないかな。

自分のちょっとした行動や何かが、誰かに影響を与えたら嬉しいし、人生はそんな連続だと思う。
この映画、過去の話は会話で出てきても、寒い回想シーンではなく、あくまでも記憶の中なのもよかった。私たちが生きていくのは今と未来。
大きな出来事やビッグニュースがなくたっていい。日々の「そんな連続」を肯定してくれる映画。
ゆりな

ゆりな