"幸せのかたち"
いつも自分の拙い書き散らしをご覧いただいている皆さま、新年明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします…
と、新年の挨拶を書いてはいるけれど本作は昨年末鑑賞したもの。
昨年のゴールデンウィーク以来の、地元・仙台での映画鑑賞。
友人との忘年会前にちょうどいい時間帯の映画はないか、と探していたところ本作を発見。
昨年公開の『ドライブ・マイ・カー』にてその名演が話題となった三浦透子さん主演作品。
ちなみに彼女、本作が長編映画の単独初主演作品となるらしい。
三浦さん演じる主人公・蘇畑佳純は、コールセンター勤務の30歳独身。
既に結婚し妊娠もしている妹・睦美の存在もあってか、母・菜摘からはあらゆる形で結婚へのプレッシャーをかけられる。
本作は、そんな世間一般が考える「幸せのかたち」に振り回され、立ち向かおうとする佳純の姿を追ったヒューマンドラマ的作品。
✏️現状維持でもいいじゃないか
総合的な感想からいうと、なんだかとても元気というか勇気をもらえた映画。
佳純は「性別関係なく、誰に対しても恋愛感情や性的欲求を抱かない」という性質を持っている。
この性質を少し専門的な用語でいうと
・Aロマンティック(アロマンティック)=他社に対して恋愛感情を抱かない人
・Aセクシュアル(アセクシュアル)=他者に対して性的欲求を抱かない人
と、それぞれ呼称する。
今日、日本発の映像作品でもようやく描かれるようになった「LGBTQ+」の「+」の部分にカテゴライズされる人のことだ。
この性質から佳純は、劇中イイ感じになる男性と男女の関係になることもない。
学生時代ぶりにあったクラスメイト・世永真帆と急速に仲が深まるけれど、そこに同性愛的な感情は一切なく、あくまで仲の良い友人という括りで一緒に住もうか、なんて話をしたりする。
結局、真帆との同棲の話は白紙になり、本作における佳純の「人生のステージ」はほとんど上向いていない…
ように見えるが、そうではない、と自分は思う。
男女が結婚して子どもが産まれて、そして持ち家を建てて幸せな家庭を持つ…というどこの誰が考えたのか分からない「人生のテンプレ」にハマらない自分という人間を受け入れて生きていく。
そんな一種の覚悟のようなものが、佳純の中に芽生えたように自分には見えた。
佳純は、世間一般の人が考えるような形ではないかもしれないが、新たな一歩を確実に踏み出しているのではないだろうか。
奇しくも自分は佳純と同じくらいの年齢で、パートナーもおらず独身。
昨年、久方ぶりにイイ感じになっていた人はいたが、思いは実らず。
実家に帰れば親から半分冗談・半分本気のようなトーンで「いい人いないのォ~?」と聞かれたりもする。
また振り出しか…このままでいいのかな…とモヤモヤした感情を抱いていたところに出会った本作。
「とりあえず、今のままでもいいんじゃない」
そんなセリフは劇中にないが、佳純の生きる姿がそんなことを語り掛けてくれたようで、とても勇気をもらえた。
☑️まとめ
若干自分語りが長くなってしまったが、いわゆる「ふつうの人生」の枠組みに捕らわれている人、またそんな枠組みにはめられそうになっている人に見てほしい作品。
ちなみに自分のお気に入りのシーンは、佳純の家族全員で食卓を囲んで、ヒザを立てながら朝食を食べているシーンです。
🎬2022年鑑賞数:117(53)
※カッコ内は劇場鑑賞数