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そばかすのcocoのレビュー・感想・評価

そばかす(2022年製作の映画)
3.8
マイノリティとされている人達は、社会にある当たり前を押し付けられながら生きてる。
ホテルで告白された時、きちんと思いを伝えようと必死に話していたのに、伝わっていなかった。あの場で佳純が最後に「そんな嘘 信じない」みたいなことを言われてしまっていて、傷ついたと思う。

「シンデレラって価値観おかしいよね」
「じゃあ台本変えちゃおうよ」
そんな佳純の思いから生まれたシンデレラ作品が、「子供に価値観を植え付ける」とは思えなかった。
佳純が過去を振り返り、「小学生の時告白されて、どうしたらいいか分からなくて、ただずっと黙ってた」と言っていたように、どこかで自分は恋愛感情や性的欲求を持てないことに気づく人だっている。
つまり、佳純が他人に対して、恋愛感情も性的欲求も抱かないのは、元々持っていた価値観だということ。
価値観に植え付けなんてなくて、自分自身の持っている価値観の差異に気づくかどうかだけだと思う。
世の中にあるシンデレラが「王子様に見初められ、結婚しました。」じゃなくてもよくて、もうひとつのシンデレラに肯定してもらえる人が居る。
真帆みたいに、おかしいと思う事を、おかしいってちゃんと言って、主張してくれる存在が側に居てくれることは凄く心強い。ありのままの自分を肯定してくれる存在がどこかに確実にいる。
だからこそ、幼稚園でオリジナルのシンデレラを流した時、ブーイングが怒ったことがすごく苦しく感じた。
最後の、
「同じこと考えてる人がいて、どっかでいきてるんならそれでいいや」
これが本当に答えだと思った。
ラストで佳純が前を向いて走るシーンがすごく良かった。進むという言葉の通り、不安な思いを抱えながらも、前へ、未来へと進んでいく。そんな希望を感じられた。
自分のセクシュアリティが社会の多くの人が持つ価値観と違っても、誰かに否定されてしまうことがない世の中だといいな。
この物語で佳純は、誰とも恋に落ちない。物語の終盤で辿り着く先は、こんな世界で前を向いて進んでいく。という終わり方。
エンディングの羊文学の「風になれ」は、私がいつも聴いていた曲だった。映画によって曲に更に文脈が与えられ、映画の内容にぴったりでよかった。
佳純は、人を見た目などの目に見えるものではなく、一人一人のことを人間として見ていて、他人に対するジャッジをしていなくて良いなと思った。
みんな一人の人間。それぞれ生きてきて、色んなことを経験してきている。だからみんな違ってみんないいよね。
私も、この映画みたいに、自分の価値観を認めて貰える事があるのならそれでいいやと思えた。
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