beachboss114

ナショナル・シアター・ライブ「プライマ・フェイシィ」のbeachboss114のレビュー・感想・評価

5.0
ただただ圧倒されます、息継ぎしないジョディ・カマー。演技に引きずり込むとは、こういうことか。スクリーン経由でもナマの迫力がビリビリ伝わってきて、見ている側もヘトヘトになる。これ、舞台で連日やってたなんて凄いわ。

ストーリーは堂々巡りでなかなか先に進まないから正直イライラするけれど、その分、終わりのない悪夢のループを体感させられる。

結局、これって、男性側に都合良く作り上げられた法制度の欠陥である以前に、それを許した社会や人間そのものに内在する問題。弱肉強食に基づく生存本能や、個々に都合の良い共犯関係に起因する。

弁護士として駆使していたスキルやテクニックで自らが追い詰められていく主人公は、これまで勝ち取ったかのように見えていた女性の地位向上が、実は強者の側に付いていただけに過ぎず、力の行使に快感を覚えていただけだと気づかされて愕然とする。

この無限のループの中で、それでも大切なのは声を上げることと、あきらめないこと。胸クソ悪い結末だけど、そばにいる無言の味方たちの存在がほのめかされ、決してこれが結末ではないことが示唆される。そこに微かな救いと力強い希望がある。

それにしても、本編の前の歌のパフォーマンスは、くそセンスなかったな(笑)。まんまな歌詞も、中途半端な振り付けも。もうちょい婉曲的な表現で加工して芸術性を高めておくれ。これじゃ市民活動家のデモか信者の集会の出し物じゃん。

あと、有識者たちの座談会なんか作品鑑賞前に見せないで。学校の授業で強制的に見せられて「後でレポート出せ」とか「ホームルームで感想話し合え」って言われてるみたいで興ざめ。こういう特典映像は、BOXセットに収めといて。
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