松瀬研祐

あの娘は知らないの松瀬研祐のネタバレレビュー・内容・結末

あの娘は知らない(2022年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

ワンカット、ワンカット、画への強いこだわりを感じる。カメラの置き場所、画の色使い。映画の中でも使用されるサンダーソニアのカラーがいろいろなところで意識的に使用されているのも画へのこだわりなのだと感じる。

夜の海のシーン、少し遠方から、砂浜にいる登場人物2名を撮るシーン、人物たちに当てる照明は狙っているだろうけれど、奥の方に当たっている光は偶然のものなのだろうか。それともあれも狙ってなのだとすると、それはそれでかなり大変だと思うし、主人公の部屋のライティングや、ちょっとした小道具などへのこだわりも画作りへの強い意識だと思う。

舞台となる民宿で、女主人である主人公が敷地の前でしゃがんていると、この町を訪れて宿泊しているもう一人の主人公ともいえる男性が、町にでるために民宿から出かけるシーンがある。日替わりで2回連続くらいで描かれるその場面、コストのことを考えるなら撮影は同じタイミングで衣装だけ着替えて撮影すればいいのだろうけれど、アスファルトが濡れていた画と、そうではない画があり、別日に撮影したか、そうでなくても、アスファルトを濡らすという手間をかけていた。

映画撮影は、なんにせよスケジュールとの戦いだし、スケジュール通りにいっていても天気にも左右される。その中で、拘れる箇所と、妥協せねばならない箇所はどうしたって出てくる。限りある時間の中で作品を作っていかねばならないことが、映画撮影の宿命。

だからこそ、同じような場面でも、二度と撮れないだろう、奇跡の瞬間が切り取られることがある。

それは、きっと、いろいろな都合があったのだと思うが、主人公の家族が事故に遭い命を落としたとされる坂道。記憶によると、おそらく3回、主人公が一人で訪れる場面、男性が一人で、たまたま通った場面、そして、2人で訪れた場面で、その坂道が登場するが、おそらく、同じタイミングで、撮影がされたのではないか。美しい風景の、青い空の雰囲気や陽の当たり方が、同じタイミングだったように感じる。それはもちろん、進行上の都合だと思うし、そんなところを気にしすぎる必要は無いのかもしれないけれど、画作りにとてもこだわって撮影されていただろうと想像しながら、映画を観ていたので、少しのそういった部分を勝手に気にしてしまった。(そのうえ、僕の勝手な思い込みで、違っていたらとんだ話なのだけど)

画作りの素晴らしさ。一つ一つの場面をとても刺激を受けながら観ることが出来ました
松瀬研祐

松瀬研祐