『裸足の季節』(脚本)『約束の宇宙』を経て、作家としてスケールを増した傑作。2015年のパリ同時多発テロに直面した人々を繋ぎ、時には国境まで超えて街と社会を形成する集合記憶、意識を浮かび上がらせていく。いやー、凄かった!!
事件発生の瞬間に至るまで冒頭からディテールを積み重ねていく描写の凄味。あらゆる瞬間が後の運命を決定付ける分岐点に見えてくる。サバイバーだけが共感できる特殊な感情にフォーカスした脚本にも驚く。ウィンクール、次作あたりでさらなる大傑作を撮りそう。
テロで両親を亡くしたフェリシア役ナースチャ・ゴルベワ・カラックスが凄くいい(終盤、彼女の表情を捉えた素晴らしいショットがある)。誰かと思えばカテリーナ・ゴルベワとレオス・カラックスの娘じゃないか!!
(あぁ、ここでも親を失う子供を演じているとは!)
事件の様子は僕も報道を見て知った程度だけど翌日、ドイツ在住でたまたまパリを訪れていた友人がSNSに無事を知らせる投稿をして、驚きと共に安堵した記憶がある。彼女は写真家で、警戒中の兵士を写していた。僕もこの映画が描く集合記憶のずっと遠隔を形成しているのかもと感じた。