ぶみ

ハントのぶみのレビュー・感想・評価

ハント(2022年製作の映画)
3.5
世界を欺く。

イ・ジョンジェ監督、脚本、チョン・ウソンとジョンジェ監督自ら主演による韓国製作のサスペンス。
韓国安全企画部の海外次長と国内次長が、組織内に入り込んだ北のスパイを探し出そうとする姿を描く。
主人公となる海外次長パクをジョンジェ、国内次長キムをウソンが演じているほか、チョン・ヘジン、ホ・ソンテ、コ・ユンジョン、キム・ジョンス、チョン・マンシク等が登場。
また、他にもファン・ジョンミンやイ・ソンミンがカメオ出演しているのも見逃せないポイント。
物語は、1980年代の韓国を舞台として、パクとキムがスパイを探し出そうとそれぞれ捜査を始めるも、大統領暗殺計画を知ることとなり、裏に隠された巨大な陰謀に巻き込まれていく様が描かれるのだが、まず難点は、パク然り、キム然り、主要登場人物が皆黒服かつ七三分けの髪型であるため、一瞬、これ誰だっけとなっている間に、話がどんどん進んでしまうことであるとともに、その内容自体も、ある程度、独裁政権を筆頭とした当時の韓国の情勢を知っていないと何が起きているのか混乱すること必至。
ただ、そういった理解が乏しくとも、派手な爆発あり、カーチェイスありと、スパイ・サスペンスとして楽しめる仕上がりとなっているのは、韓国作品らしいところ。
作中、東京が登場するのだが、そこで最初に乗り込むタクシーが、通称アローラインを備えた3代目トヨタ・コロナであったのは、流石に年代的に古すぎかなと感じたところである反面、縦目のニッサン・グロリアが登場したり、5代目となるトヨタ・クラウンに至っては、派手に横転したりと、クルマ好きの視点からすると、なかなか見どころが多かった次第。
実際に起きた事件をモチーフとしながらも、派手なアクション、ヒリヒリするようなサスペンスを取り入れたエンタメにしっかり昇華させており、前述のように、今一つ人間関係等がわからなくとも、それなりに楽しむことができるとともに、前日に観た原田眞人監督『BAD LANDS』がキャラクターや舞台設定を活かしきれていなかっただけに、まざまざと韓国作品の底力を見せつけられた一作。

独裁者の手先は、独裁者より悪い。
ぶみ

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