ハル

ハントのハルのレビュー・感想・評価

ハント(2022年製作の映画)
3.8
実話ベースであることが信じられないレベルの厳しすぎる猫写の数々(あくまでフィクション)
歴史的背景に疎い自分でも朝鮮半島の対立関係がどれほど壮絶なものなのか、しっかりと理解できた。

誰がスパイなのか?ここにいる仲間は敵なのか?
疑心暗鬼スパイラルの中、北朝鮮から送り込まれたスパイ『トンニム』を探し出すために互いを疑い合うキムとパク。
辛辣なシーンは次々でてくるし、1980年代の韓国の悲壮な時代感に胸がえぐられていく。
こんな時代があったんだね…
拷問シーンも多く、「独裁」という言葉が度々出てくるのも、当時の状況を深く掘り下げている証拠。
終始重苦しいムード。
圧政が如何に人の心を蝕むのか…今の日本も決して他人事じゃないような気もするし、テーマの重みが身にしみた。

なお、作品が持つ迫力にひき込まれる一方で、問題点が。
登場人物の多くがスーツに七三分け気味なので、顔の見分けがつかない!
パクとキムが出てくる度に、「あれ、この人はどっちだっけ…」となってしまう。
韓国人俳優に対する浅薄な見識がボトルネックに…(たぶん、僕固有の問題)

ただ、それでも流石に終盤は見分けがついてきて「うわ…そっちへ舵を切っていくのか」と驚愕の展開に心が右往左往。
暗号、スパイ、学生運動。
民主主義とは程遠い世界に気持ちが追い付かなくなっていく。

クライマックス。
人を信じ、当たり前に生きていく事がどれだけ難しいのかを見せつけられ、メンタルを鈍器で直接殴られたような気持ち。
際の際まで逃げることを許さないエグめのシークエンス。
エンドロールも曲と文字のみのダークな様相なので、見終わったあとは深く大きな溜め息をついてから帰路へつきました。
ハル

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