妻と別れたロックミュージシャンが娘の共同親権を得ようと静かに奮闘する話。
元妻と娘が一緒に暮らしていて、ジョビーは弁護士を通してしか話が出来ない状態。娘の共同親権が認められるまでは離婚の署名はしないつもりらしい。
妻と娘をあまり省みずに音楽活動をしてきたにもかかわらずミュージシャンとして成功できず、よき父親になることもできず、自身がやってきたことは一体なんだったのかという、ポール・ダノの迷いと苦悩に満ちながらも静かな演技が素晴らしい。
親権を得るにはもちろん娘のことを第一に考えなければならないが、ジョビー自身が苦しみとプレッシャーに押し潰されそうになっていた。
娘に会うことができても娘からすると父というより「しばらくいなかった人」、父だとわかっていてもどこか無意識なよそよそしさがあり、それがジャビが「娘の人生の完全に外側」に置かれていることを間接的に見せているようでつらい。
子供はそこまで考えているわけではないと思うが、一緒に生活している母とは明らかに対照的で、ジョビーの立場からすると娘との心的距離が果てしなく大きくなってしまったように見えるから。
For Ellen というタイトルどおり、娘のために決意する未熟な父の姿を描いた静かな映画だった。
ポール・ダノの繊細な演技が絶品。