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SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのCinemanのレビュー・感想・評価

3.0
『シー・セッド その名を暴け』
マリア・シュラーダー監督
2022年公開 アメリカ

鑑賞日 2023年5月2日 U-next レンタル

ハリウッドの大物プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン(ミラマックスの創立者)の30年に渡る女優に対する性暴力を告発した2人のタイム誌の女性記者を描いた実話が元になっています。

ワインスタインを告発したジョディ・カンター とミーガン・トゥーイーという2人の女性調査報道記者が書いた「その名を暴け―#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い―」という本を元に制作された作品です

【Story】
ニューヨークタイムズ誌のジャーナリスト、ミーガン・トゥーイー(キャリー・マリガン)とジョディ・カンター(ゾーイ・カザン)はフェミニスト団体からハーヴェイ・ワインスタインが行なったセクハラについて情報提供を受けます。

ワインスタインはモデルを触ったり強引に関係を結んだが警察に訴えても起訴されません。
ミーガンたちはワインスタインの会社の従業員たちからも話を聞こうとしますが皆ワインスタインの名前を聞くだけで口を閉ざしてしまいます。

ある日ジョディはワインスタインから商談目的で関係を迫られて断ると仕事を失うと脅されたという話をグイネス・パルトロウから聞きます。モデルのアンブラ・バティラーナ・グティレスからはワインスタインに強引に迫られたという音声記録を聞かされました。
その後ジョディの元にグウィネスから連絡が入り、彼女のハウスパーティーに突然現れたワインスタインから圧力をかけられたと話します。

ジョディは元ミラマックスの従業員と会い、ロウェナ・チャン、ゼルダ・パーキンス、ローラ・マッデンに会うべきだと助言を受けます。
早速ジョディは会いに行きましたがロウェナは不在。ローラはワインスタインの名前を出した途端に電話を切ってしまいます。
ようやく会う事が出来たゼルダに話を聞気出しますがゼルダは以前にも同じような事を書くという人がいたが、結局ワインスタインにつぶされたと言います。

ゼルダはある日、友人がワインスタインに虐待されたことを聞きワインスタインに問いただしたがワインスタインは何もしていないと言うばかり。
弁護士に相談しても起訴は不可能で和解しかないと言われあきらめて映画界から身を引いたが自分が集めた書類をジョディに渡すと言って去ります。

ミーガンとジョディはワインスタインの弁護士に会うがワインスタインは犯罪性がないと弁護士は主張し、和解を主張していると言います。

その後ミラマックスの会計士や元社員からワインスタインの職権乱用を訴える内部文書などを得ることが出来ました。しかし誰も報復を恐れて名前を出すことを拒否していました。

ある日アシュレイ・ジャッドが名前を記事に載せてもいいと連絡してきました。アシュレイが名前を出したことで世界中のワインスタインの被害者たちが次々と声を上げ、ワインスタインの悪行を暴露し始めたのです。

【Trivia & Topics】
*ワインスタイン。
30年以上にわたって自社の女性職員や女優80人以上に性的暴行やセクシャル・ハラスメントを加えていました。
2017年10月にワインスタインの女性への扱いに関する調査レポートを発表する前日、何らかの形で私たちの動向を聞きつけていた米『ヴァラエティ』誌がタイム誌の告発記事が間近に迫っていることをすっぱ抜きました。
この報道に関してワインスタインは何も知らない「この話はとても良さそうだから、映画の権利を買いたいね」と、皮肉じみたことを言うほど余裕を見せていました。

ワインスタインにレイプされた証言した女優のアーシア・アルジェントを含む3人の証言、そしてワインスタインからの性的強要を退けたので報復され仕事が激、減したとするミラ・ソルヴィノやロザナ・アークエットを含む4人の女優たちの証言が次々に報道されたが、
ワインスタインは「すべて合意のもとだった」と主張し全面的に否定する声明を発表した。

しかし沈黙を破った被害者たちの勇気ある声に共鳴してその後グウィネス・パルトロー、アンジェリーナ・ジョリー、ケイト・ベッキンセール、サルマ・ハエック、ローズ・マッゴーワン、アシュレイ・ジャッド、アナベラ・シオラなどの女優やモデル、ワインスタインの会社の社員などが、ワインスタインからレイプやセクハラの被害を受けたことを次々に証言し始めた。

その多くはニューヨーク州における性犯罪の時効を過ぎてしまっていたためにワインスタインに刑事責任を問うことはできなかったが、2018年5月、ワインスタインは2006年当時アシスタントだったミミ・ヘイリーに性的暴行を加えたこと、そして2013年に当時女優を志願していたジェシカ・マンをレイプしたことで逮捕、立件され、裁判にかけられ、2020年3月11日、ニューヨーク最高裁判所の判事は、ワインスタインに禁錮23年の量刑を言い渡した。

*MeToo運動。
セクハラや性的暴行などの体験を告白・共有する際に、SNSでハッシュタグ「#MeToo」を使用して、それまで沈黙してきた問題を「私も被害者である」と発信することで世の中を変えていこう、という運動のこと。2006年に若年黒人女性を支援する非営利団体「Just Be Inc.」を設立したアメリカの市民活動家タラナ・バークが、家庭内で性虐待を受ける少女から相談されたことがきっかけで、2007年に性暴力被害者支援の草の根活動のスローガンとして「Me Too」を提唱した。

*原作のこと。
ジョディーは職場問題が専門でミーガンは女性や子供の問題を得意分野とし2014年にピュリッツァー賞調査報道部門の最終候補者になっている。
二人はワインスタインについての調査報道で多くの賞を受賞し、ジャーナリズムの分野で最高の名誉とされるジョージ・ポルク賞や、「ニューヨーク・タイムズ」としてピュリッツァー賞公益部門を受賞した。
本作品はテイクアウトの食事と引き出しに常備していたアーモンドチョコで空腹を満たしながら連日深夜タクシーで帰宅して真実を追求したジョディ・カンター ミーガン・トゥーイーの熱意の賜物だ。

*ジョディとミーガン。
ジョディは職場問題という小さな世界に専念しており、ミーガンは2016年にロイターから転職した新人だが妊娠中にドナルド・トランプに対する最初の性犯罪疑惑のいくつかを報じている。
ワインスタインの調査を始めた当初ジョディはアドバイスを求めて育児休暇中のミーガンに連絡した。
ミーガンは社会の片隅で無視されたり見過ごされたりしている女性や子どもたちを中心に取材していたのでアシュレイ・ジャッドやグウィネス・パルトロウのような有名俳優たちのことには当初興味がなかった。
グウィネス・パルトロウの信頼を勝ちとったジョディはパルトロゥを訪ねる際にミーガンに同行してもらったことにより大スターから本音を引き出すことを学んだ。
ジョディーとミーガン率いる取材チームは、ピューリツァー賞を受賞し映画化が決定。
製作はブラッド・ピットの製作会社プランBとアナプルナ・ピクチャーズ。

*「お前を殺す」とブラッド・ピット
1997年までグウィネス・パルトロウと交際していたブラッド・ピットは交際中のグウィネスが『Emma エマ』(1996)や『恋におちたシェイクスピア』(1998)の出演契約を交わした後にワインスタインからホテルの部屋に連れ込まれそうになったことを聞き、「また彼女を不快にさせるようなことがあったら、殺すからな」と物凄い剣幕でワインスタインを怒鳴りつけた。
「私がまだ有名でもなく権力もなかった頃にブラッドは私を守るために自分の地位と権力を使ってくれたの。彼は最高よ。そんな彼が大好き」とグイネスは語っている。

*キャリー・マリガン。
若い頃からテレビと舞台中心で活躍していたマリガンは初めて出演した映画『17歳の肖像』(2009)に主演してイギリス・アカデミー賞主演女優賞を受賞。アカデミー賞主演女優賞にもノミネートされた。
その後『わたしを離さないで』(2010)、『ドライブ』(2011)、『SHAME -シェイム-』(2011)、『華麗なるギャツビー』(2013)、『未来を花束にして』(2015)など数々の作品に主演し『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020)では2度目のアカデミー賞にノミネートされている。

マリガンは2015年の主演作『未来を花束にして』で1900年代に女性参政権運動に目覚める女性を演じて触発され、慈善団体「War Child」のグローバルアンバサダーとなった。
2014年に『War Child』のメンバーとして訪れたコンゴ民主共和国のゴマで出会った11歳の女の子が毎晩眠るのが怖い、目の前で残忍な方法で家族が殺害されている彼女は毎晩夜中に男たちが叫んで家に入ってきて、彼女を傷つけ、連れ去り、レイプするという妄想に悩まされて怖いのだということを知り大きな衝撃を得る。
「私自身、一児の子どもの母親です。紛争地帯の子どもの体験を聞くたびに、もし自分の子どもだったら……と想像してしまいます。非常に心を打たれたのは、彼女たちのような子どもたちは皆、医師や弁護士、エンジニアになりたい、と言う夢を持っていること。皆、現実社会を変えるために学校に行きたい、と言う強い意志を持っているのです」とマリガンは語っている。


このたぐいの告発ジャーナリストものには過去に何本もの傑作があります。欲を言えばもうちょっと緊迫感が欲しかった。
キャリー・マリガンが老けている(37歳)のに驚いたけれど相変わらず素敵なことに変わりがない。

【5 star rating】
☆☆☆
(☆印の意味)
☆☆☆☆☆:超お勧めです。
☆☆☆☆:お勧めです。
☆☆☆:楽しめます。
☆☆:駄目でした。
☆:途中下車しました。
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