mimitakoyaki

SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

4.3
派手な演出もなく地味な印象もありましたが、映画界で起きた性暴力による支配を構造的な問題として向き合い、巨大な権力に屈せず地道にファクトを積み重ねる調査報道、ジャーナリズムの力を見せつけた女性記者達と、性暴力によって深く傷つけられ夢を絶たれ、今もトラウマを抱える被害者の女性達の葛藤と勇気を誠意と敬意をもって丁寧に描かれていて、それがとても感動したし励まされたような気持ちになりました。

映画界に君臨するハーヴェイ・ワインスタインの性加害は、ある意味公然の秘密みたいなところがあったと思います。
しかし、被害者を脅して口止めする事で、その事が表に出せなかったり、やっと表に出ても握り潰されたりする。
それって、今大きな問題になってるジャニーズ事務所での性加害と全く同じ構造だと思いました。

キャスティングとかいろんな権限を持つ者が、その力を利用して立場の弱い人を性的に搾取、支配する。
被害者は、尊厳を踏み躙られて、それまでの人生が一変し、自分の落ち度だと思ったり、罪悪感を感じる人もいて、本当に許されない卑劣な暴力です。
被害に遭った事を誰にも言えずに一人で抱えたり、勇気を出して声をあげても、誰にも届かない絶望と無力感はいかほどかと思います。

長年こうして見て見ぬふりされて来た問題を、被害者に寄り添いながら、これ以上の被害を生まないために、コツコツと粘り強く取材する2人の女性記者がとにかくかっこいいし、彼女らが、小さな子どももいる若いママさんで、忙しく家庭生活も営む生身の女性として描かれていたのもリアリティがありました。

被害者女性達の声を上げるまでの気持ちの揺れ動きも丁寧に描かれ、不安だし怖いけど、それでも同じ思いで苦しむ人がないように、或いは同じような被害に合った人のためにも、大きな葛藤の末にギリギリのところで立ち上がるのも、どれだけ勇気がいったことか。

こうした人たちが社会や歴史を動かして前に進めているんだって、名前も知られてない小さな一個人でも、そのひとりひとりが#MeTooという大きなムーブメントに火をつけ、社会を変える力を持ってるダイナミックさを感じ、とても胸を打たれました。

ゾーイカザンがある被害者に会いに行き、被害者が留守でその夫に話したことは、え、それ言うたらアカンやん⁉︎と、そこは引っかかりました。
でも、キャリーマリガンとゾーイカザンの一挙手一投足がほんとに素晴らしく、引き込まれました。

性暴力を訴える事がどれだけ大変な事なのか、しかも相手は巨大な権力を持っているだけに、簡単に潰されてなかったことにされてしまうし、勇気を持って声を上げても、女性の落ち度を言われたり、そのおかげで恩恵も受けたでしょ的な事を言われたり、脅されたりと、被害者が何重にも苦しむ事自体が不条理過ぎるので、セクハラ、パワハラ、性暴力などに対して、もっと社会的に理解がすすんでいって欲しいと思ったし、この作品がその助けにもなると思うので、いろんな点でこの作品が作られた意味がとても大きいと思いました。

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