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SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのmoneのレビュー・感想・評価

4.1
被害者たちの挙げた声、その勇気、そしてジャーナリストたちの信念に打ち震えた。

無視され、軽んじられてきた彼女たちの声をもう一度掬い上げる。これまでの、そして今この瞬間苦しんでいる現実の被害者、さらにはこれからなり得るかもしれない潜在的な被害者のために。すなわちそれは、女性、クィア、ひいては男性含む全ての人々の物語となりうる。

今この瞬間、#metoo及び本作の公開後の社会において、ここで描かれている問題が最も試されているのはほかでもなく日本社会だろう。
昨今日本で報じられた某J氏の性加害問題は、勇気ある告発者が続々と現れ信じ難い事実が明るみに出続ける一方、国内の主要メディア・業界は沈黙を続け、当該事務所の不誠実な対応で片付け、ついには声を上げた、あるいは被害者に寄り添った人間を切ってしまう始末。
日本芸能界の未熟さを憂うのは簡単だけど、果たしてどうしたらそこから少しでも前に進めるのだろうか。声を上げて、その声を聞くこと。それでも中々深くて暗い闇からは進めない。終盤に描かれる、改めて対峙して分かる巨悪さと邪悪さに、迷い、絶望し、諦念すら抱くミーガントゥーイーの言葉が沁みる。挫折を経ながらも前を向き続けて悪と立ち向かうジャーナリストと被害者たちの勇気。そして権威に怯まず己の使命感をもって真実を伝えるNYT編集部の覚悟。本作から得られるヒントとエンパワメントは計り知れない。
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