いにょ

SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのいにょのレビュー・感想・評価

4.0
「スポットライト」に並ぶ、強大な権力とそのエコシステムによって抑圧された人々の声にならない声を拾い上げた実際の事件を元にした映画。

こんな明らかに犯罪者であるレイプ犯をさっさと捕まえられるように被害者に配慮した法や環境の整備をもっとすべきだと思うと同時に、ちゃんと客観的&公平にファクトと正義に基づいた不幸を取り除くシステムが早く世の中のあらゆるところにインストールされて欲しいと、色々頭がぐるぐるしちゃう。

例えば、日本では厚労省からのお達しによって企業はセクハラの訴えがあった際に対応しなければならないのが法律で義務づけられ、多くの女性が救われやすくなったのは素晴らしい一方、裁判であれば明らかにセクハラではないと判定されるようなそもそも性的な言動・接触や権力関係が無かったり、訴えに捏造や嘘や秘匿があったとしても、本人が不快だとさえ言えば、企業はセクハラであるという訴えを厚労省の手前、対応したという事実を残す必要があるため無視出来ず、そこに事実性が無くともセクハラとして処理するような言ったもん勝ちの様相を呈していたりする。そして残念ながらこれを悪用する話も色々と聞くことも増えた。

企業にとっては、訴えがあったのに何も対応しないと厚労省の目があるから無視できず、とは言え懲戒処分などを出してしまうと裁判になって負けることが分かっているから、懲戒処分はせず裁判に持ち込まれるリスクの無いギリギリのところで、真実かどうかや公平性を適正に調査する義務を負わず、企業側で自由に裁量できる企業の一存でセクハラ認定を行ったりする。

完全にシステムの穴で法律的な知識が無い人がこれに適切に対処するのは難しく、昔、痴漢冤罪が映画のテーマになることなどもあったが、本来、本当に断罪すべき悪に対するシステムを悪用する例はあちこちで聞く。

ワインスタインは明らかにレイプ魔で完全に犯罪な訳だが、それとは全く次元の異なる性的な要素が一切無いメッセージ上の諍いでさえ、後からメッセージを消す証拠隠滅行為や秘匿・虚偽の申告に及んで自分に都合の良いように情報操作して自己正当化し、まるでレイプと同列かのように被害者面をするクソみたいな人間もいたりするのを見聞きした経験があったりする。

自身の都合の良いように他者やシステムをtake advantageするという意味で、ハーヴェイ・ワインスタインのような男も、システムを利用して自らの意思に沿わない人を意図的に貶めようとする人間も根っこは同じクソ野郎なんだろう。

そういうクソみたいな男や女がいるから、男や女の立場をより悪くし、poralizationはより深くなり、生きづらい世の中になる。

つまるところ、この例に限らず立場やシステムを悪用して人を貶め、自身のやっていることに悪意を感じない自己認識の歪んだ人間はこのハーヴェイ・ワインスタインと大差無い。

話は飛ぶが、自身にまともな恋愛経験が無いことを隠す・正当化するために、女性としか付き合って来なかったという嘘をつくような人もいたりして、本人はLGBT allyである風を装っているのだがそれは何よりもレズビアンの人を馬鹿にした行為であるということに自覚が無い人とか(多分本人はその場凌ぎで言ってるので自覚や記憶さえおそらく無い)、リベラル的な世の中の流れを自己正当化のために悪用する人をここ数年ぐらいで色々と見過ぎた。

本人は上手く切り抜けたつもりでも、それらの揺り戻しはいつか将来来るだろうと思っている。時間はかかるだろうが万人に取って公平なシステムが早く世の中にインストールされて欲しいと願っちゃうね。
いにょ

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