"独りでなければ彼女たちは発言するはず" という二人のジャーナリストの信念が、数千人もの新たな告発者をもって正しいと証明されるまでの過程を見た。
問題は性犯罪者よりも被害者を守る法やシステムにあると、はっきり言い切る被害者女性の冷静さ。いっぽうで、罪を追及されてもなお、護身のことしか考えない加害者側の身勝手さ。この激しい差に私は絶望した。
物的証拠がない分、事件の詳細は被害者女性の語りのみで明らかになるわけだけど、聞いているだけで吐きそうになる。誰に話しても事実と認められず、挙句の果てには金の力で捩じ伏せられる。映画業界のトップの前ではみな無力。最大の屈辱を記憶から消し去り、スティグマから逃れるべく、必死に日常生活を送り続ける女性たちの姿があまりにも痛ましかった。
巨大な権力を行使して女性の人権を搾取することが、いかに卑劣で恐ろしいことであるか、この一連の事件の報道によって改めて認識されたことは間違いない。しかしまだまだ解決には程遠いはず。薄っぺらいことしか言えないのが本当に悔しいけど、トラウマを抱えた性被害者が声を上げやすい社会、そして性加害者への厳罰化が進む社会が一刻も早く実現してほしいと心から願う。
