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SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのryodanのレビュー・感想・評価

5.0
素晴らしくよく出来た作品。ハリウッドの真実追求モノは、絶対によく出来ているし感動的な話も多い。今作も期待通りの展開だった。ただ今作が更によく出来ていたのは、真実を解明しようとする記者達、被害者達をカメラが同じ目線で捉えているところだ。個人的に特に素晴らしいなと思ったのは、過去パートの被害者達を事件当時だけで切り取ることなく、その後のシークエンスを描いたところ。物語の構成上、それを後ろで牽引していたのはA・ジャッドだ。90年代、リアルタイムで映画を見ていて、彼女のキャリアが突然失速したのが不思議でしょうがなかった。直接的な原因と断定は出来ないが、この事件で干されたと推測するに難しくない。G・パルトロウも突然キャリアが消えた。事件を機に精神的に不安定になりキャリアが失速するのも十分考えられる。ではスター街道を行く俳優達はどうなんだと考えると、権力のあるものに屈しながらスターの座を射止めたかも知れないし、念願のオスカーの影にそんな事件だってあったかも知れない。そんな華々しい彼女達、彼等を自分達は消費している。なんともモヤモヤしてしまう。被害に遭われた方々の傷は現在進行形である。何十年も前の過去の傷ではない。声を上げたからって癒えるものではない。力のある者がその力を悪用し弱き者を搾取する、家庭、学校、企業、果ては国家間にその歪みは起こる。自分が自分らしく生きようと思ったら、自分の事だけ考えていればいいというのは大きな間違い。どれだけ他人の事を考えられるかが先ずは最初の一歩だと思う。
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