CheshireCatYK

SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのCheshireCatYKのレビュー・感想・評価

4.7
とにかく声を上げることの難しさと怖さ、
そして大きなリスクを犯して勇気を持ってそれが成し遂げられた時の未来の可能性の大きさを見せてくれた映画。

みんな起きたことは知っていても、それを私たちが知るに至るまでの報道の時間やリスクや苦悩、証言者の恐れ、何よりも、当事者の勇気を、ここまで鮮明に見せてもらわなければ、というか、この映画を見ないと、多くの人には、

「著名な業界の大物が、セクハラで訴えられて捕まった」

と、おそらくたった一言で片付けられてしまい、日々過ぎ去るニュースのひとつで終わってしまったかもしれない。

そう思うくらい、ドキュメンタリー的な見方をしてもすごく丁寧に描かれていたし、映画として緊迫感の作り方、そしてたまに出てくる無理のないジョークもセンスが光っていた。(取材に取り憑かれたように働く妻のアテンションを引くために夫が「俺、浮気してるよ。」「相手は女優で、めっちゃセクシーなんだ。」とかジョークで嘘ついて話しかけるのかわいすぎた😂)
アマプラで劇場に続いて2回目を見たけど、全く色褪せず、同じように引き込まれて、映画としての完成度の高さを改めて実感。まじでなんでオスカースルーだったん??怒(これでまさかのオスカーノミネートゼロ!!)

Zoe Kazanは少々苦手だったんだけどこの映画で好きになった。Carrie Mulliganは、育児ノイローゼから疲れた記者から生き生きと働く記者まで、さまざまな顔をリアルに見せてくれてさすがだった。妊娠、育児、育児ノイローゼ、小さい子2人の子育て、と、プライベートだけでも大変だったであろう2人がこれを成し遂げたことがすごい。

やはり最終的に人の心を動かすのは、何かパーソナルなこと、例えば自分の娘を思ったり、他の人のために誰かがリスクを犯してまで行動していると知ったり、そういうことがあって初めて、自分も、リスクを負っても助けになりたいと思えるんだなと。

キャリアや評判に傷がつくリスクをとった有名な人たち、
自分の未来やキャリアを潰されて、人生の半分以上沈黙を貫くことを強いられてきた人たち、
実際に声を上げていたが踏み倒されたり、その声が世の中で消滅してきていた人たち、
この時、そしてそれに続いて声を上げた、すべての勇気ある方々に、拍手喝采とありがとうを送りたい。