六四二

ペパーミント・キャンディー 4Kレストアの六四二のレビュー・感想・評価

4.5
人生のいくつかの分岐点を経て人はその人になる。ということをこの映画は強く意識させる。
自分は反省することのない小市民で、深刻に過去を振り返ることはない。違う自分の可能性に思いを馳せるのは各人の勝手だが、それは今そばにいる人達に対して不遜、不誠実だと思っている。
本作は主人公の人生の分岐点ごと章立てになっており、章と章の間に、軌道を行く列車の車窓風景が差し挟まれる。これは時間の経過を表しているが、よく見ると線路と並行する道路をクルマはみなバックで走っている。逆再生だ。そして線路脇の花びらや木の葉がマジックみたく地面や空中から元の枝に向かって吸い寄せられていく。これがリアルなのか加工映像なのか意図したものかわからないが、人生が不可逆的であることを直感的に伝える。主人公には残酷だ。観客は時を逆に進む列車に乗り、より良く生きていた彼の過去へ遡って彼の人生の転換点を目撃する。
六四二

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