木蘭

地下室のヘンな穴の木蘭のレビュー・感想・評価

地下室のヘンな穴(2022年製作の映画)
3.0
 オフビートの笑いに包まれた不条理なホラーというか怪奇譚。フランス№1ヒットのナンセンス・コメディと思って観ると拍子抜けするかも。

 オフビートな笑いのテンポだとか、電子技術が進んだ日本とか・・・一昔前のフランスのコメディ・・・という雰囲気が全体を覆っていた。
 冒頭部で特に、古いVHSを思わせる少し色がにじんだり、ピントが浅くボケた様な映像に成っているのは(初めは映画館の映写機に問題があるのかと思った)、あえてレトロ風に見せる演出意図があったのだろうか?

 とにかく、何でそうなるの?とか、それは何なの?とかは考えて観てはいけない。語られないので道理を気にしても仕方が無い。
 とにかく2組のカップルを中心とした不思議な世界の不条理劇を眺める他は無い。

 この四人がとにかくエゴイスト。
 果たせなかった夢に取り憑かれて今ある時間を浪費してでも若返ろうとヘンな穴にモグリ続ける妻と、日本製の電子ペニスを取り付けた主人公のボスは、具現化された願望に振り回される分かりやすい狂言回し。ボスの若い恋人も、奔放な性生活を楽しむ欲望に素直な女性。
 そして主人公も、恐るべきマイペースさで、妻を心配もするが決して寄り添ったりはしないで、淡々と自分の世界のリズムを守る、これまた欲望に忠実なエゴイスト。
 とにかく皆、自己中心的で欲望に正直に生きている。欲望に忠実であれ、されど振り回されてはいけない・・・という事か?

 ベルギーあたりで取られていそうな風変わりな小品・・・といったフランス映画だった。
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