真一

MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらないの真一のレビュー・感想・評価

3.5
 タイムループしても気付かないほど、マンネリ化した「多忙な会社生活」を送っている私たちの姿を描いたコメディー作品。低予算の邦画ですが、よくまとまっています。

 月曜日の朝を迎えると、1週間前の月曜日に逆戻りしてしまうタイムループに陥った中小の広告代理店。キャリアアップの転職を控えた猛烈社員の吉川朱海(円井わん)は、後輩社員に「僕たち、タイムループしています」と言われる。当初は意味を理解できず、ガン無視を決め込んだ朱海も、徐々に異変に気づく。この衝撃の事実を、会社上司にも理解してもらわないといけないと考えた朱海だが…

※以下、ネタバレ含みます。

 この映画を見て思った。もし主人公が自分だったとしたら、本当にタイムループに気づけるだろうか。お得意さんとのお付き合い。新規の顧客開拓。パワポを使ったプレゼン。社内出世競争。赤提灯で同僚と繰り広げるパワハラ上司の悪口。競技場の400メートルトラックを延々と周回しているかのような日々の中で、タイムループが発生したとしても、少なくとも僕の勤め先の連中は気づかないのではないかと思う。

 そう、この映画は「タイムループ」をテーマにしていない。タイムループしても分からないほどパターン化した日々を送る、異常なニッポンの企業風土をネタにしているのだ。目の付け所が、素晴らしい。

 「タイムループ」という常識や価値観を根底から揺さぶる話を社内で持ち出しても、誰にも伝わらない様子を描いているのもグッド。まさに「ニッポンの会社、ここにあり」という印象を受けた。

 見せ場は、タイムループに最初に気付いたのが後輩社員の2人組でなく、実は、地味で精彩を欠く窓際社員の神田川聖子だったという場面。聖子が馬鹿にされながらも2人組に訴え続けた結果、事態が動きだしたわけだ。出世コースから外れ、会社の論理に染まらなくなったヒラ社員だけが、世界の大変化に気付く―。何ともリアルな設定だ。

 ただ、タイムワープの原因を、漫画づくりへの思いを断ち切れない永久部長の思念に持っていったところは正直、拍子抜けした。そして、部長がつくりかけた漫画を部下たちが引き継ぎ完成させると、なぜかタイムループから抜け出すという設定も、やや安易な感じがした。扱ったテーマが斬新でリアルだっただけに、オチはもうひと工夫ほしかったです。
真一

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