CANACO

MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらないのCANACOのレビュー・感想・評価

3.5
「合図を覚えてください。鳩です」(鳩の手)

評判通りとても面白かった。2022年10月公開の笑える低予算映画で、『カメ止め』好きの方は見てよいかも。「全員いそう」なキャラ設定、かつ全員まともという珍しいパターンで展開。平さんのプレゼンは声を出して笑った!(途中で服が変わるのはわざとですかね)
マキタスポーツさん演じる部長は、リリー・フランキーさんのそれと同じくらい、おじさんの味わい深さが出ていてよい。

『カメ止め』がゾンビ物コメディだとしたら、本作はタイムループ物コメディ。
タイムループ物なので同じ素材を何度も使う編集になるけど、それでもこんなに面白くなるぞという実験作のようでもあった。

製作した株式会社チョコレイトの代表・渡辺裕介さんは博報堂出身なので、『カメ止め』(2017)はしっかり分析したと思われる。鳩の手も『翔んで埼玉』(2019)の埼玉ポーズを参考にした可能性あるかなと。※ 埼玉ポーズは埼玉県鳥のシラコバトの羽と、埼玉の“玉”を輪っかを表現したポーズ。

ちなみに『カメ止め』で監督の妻役を演じた、しゅはまはるみさんが、大手代理店勤務の女性役で登場する。

憧れの大手広告代理店に転職するチャンスを手に入れ、これが成功したらと小さな広告代理店で身を粉にして働いている吉川朱海。終わらない仕事に全力で打ち込むも、週末には恋人に愛想をつかされ、「最悪…」と会社のデスクで眠りにつく。目を覚ますとまたいつもの月曜日。窓に鳩が激突。
終わらない仕事に全力で打ち込んでいると、後輩2人から「吉川さん、これから僕たちが言うこと信じられないかもしれないけど、聞いてほしいんです。僕たち、タイムループしてます」と告げられ-ー。
そこから職場の仲間と、1週間無限ループからの脱出をはかる物語。

下請けの広告代理店で、どう見てもブラックな状況。地獄の1週間を延々と繰り返すのだが、社員は真面目でデキる人たちなので、なかなか脱出はできないものの学びを得て状況が改善されていく。
「繰り返す日(タイムループ)の中、意志をもって状況を改善していく」というテーマは、YouTube短編映画『ハロー! ブランニューワールド』でできあがっているので、それをお仕事×1週間タイムループとして完成させた印象。

途中から『バクマン。』的な展開になり、青春感はじける。『カメ止め』の結束感にも近い。このあたりちょっと長く感じたものの「人生をやり直したい」「死にたい」人に対する、台詞にすると説教臭くなるメッセージが漫画に込められていると感じたので、よい。
売れる要素を分析し、狙った通りに当たった作品だと思う。でも良作には変わりなく、仕事に対しても前向きになれる。

................
◻︎メモ
少し竹内結子さんの雰囲気がある円井(まるい)わんさんの芸名は、柴犬に似ているから「わん」で、「円井」は器の大きさや許容を表しているらしい。

監督の竹林さんは、小学校1年生のときに『ホーム・アローン』を見てから映画が大好きになったそう。

脚本の夏生(なつお)さえりさんは株式会社チョコレイト所属。プランナー・ストーリーメーカーとして活動中。恋愛ツイートで人気を博したが、今は育児ツイート多め。

「第32回日本映画批評家大賞」にて竹林亮さんが新人監督賞および編集賞、小林譲さんが編集賞を受賞。

YouTube動画名「もう限界。無理。逃げ出したい。」(18:52)2019年12月公開
※作品名『ハロー! ブランニューワールド』
監督:竹林亮、脚本:夏生さえり、主演・企画:あさぎーにょ ほか

YouTube動画名「お願いします。返してください。」(24:37)2020年8月公開
※作品名『Where is My Photo』
監督:竹林亮、脚本:夏生さえり、主演・企画:あさぎーにょ 企画:ぶんけい ほか

YouTube動画「記憶を返してください」(37:25)2022年3月公開
※ 作品名「グッバイ、コスモス」
監督・脚本:竹林亮、脚本協力:夏生さえり、企画:あさぎーにょ、出演:あさぎーにょ、@小豆、大坂桃香、柚穂
CANACO

CANACO