ソウル

MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらないのソウルのレビュー・感想・評価

3.3
猛烈なモヤモヤが残るループ映画。
第2幕辺りまでは「このループ映画かなり面白いぞ?!」
第3幕から「何て展開にしてくれたんだ…」に尽きる映画。
88分が長く感じた人はいるんじゃないだろうか。

ざっくりと見れば面白い作品だと思う。
ただ頭を冷やして見ると、最後の結末は非常に怖い。最終的にメッセージ性を重視した作品として描くのだとしたら、脚本とキャラ設計には乗り切れない部分が多々ある。

みんな序盤で「この部長やばそうだ」「この部長が会社の足を引っ張ってる」と感じたはず。いやその通りであり、映画の中で何一つとして従業員への配慮など描かれおらず、出社しても漫画読んでるだけ。頭下げて謝罪するシーンは組み込まれたが、それはできる人間として描くには足りなすぎる。そりゃみんな残業をするしかないし、それに気づかない部長は重症である。
あの漫画が部長を人格者として肯定するのにもかなり無理があり、陽気な振る舞いだけで良キャラを形成するのはご都合主義過ぎている。
そんな部長が最後、従業員から好かれる素敵な部長として描かれ、挙句辞めかけていた吉川さんは笑顔で会社に残るという恐怖。それも一連の流れを"何も知らない"部長に会社に残らされるのだ。転職先に夢がないことを知ったにしても、残る理由はないはず。何故ならループが終わってもこの会社の態勢が変わることは恐らく無いからだ。

ループを繰り返した結果何が変わったのか、それはギリギリの生活を繰り返す日常からの脱却ではなく、本来はどブラックである会社とその部長に対する悪いイメージの払拭と人気株の底上げに過ぎない。

素直に数珠を破壊することを着地点としエンタメに振り切るか、最後を殻を被った良い話にしない着地点にするなどして欲しかった。

そしてもう1つ許し難いことが、漫画の最後を書き上げて貰うために部長に懇願するシーン。続きが見たいと訴えかける場面は本来感動を呼ぶ筈であるのに、部長以外はループから抜け出すことを元来の目的としているため、本心がどこにあるかは分からない従業員からの発言はあわや部長の漫画を小馬鹿にするようにも十分に見えてしまうのだ。

前半のテンポ感と映像的なセンスを大いに感じた他、マキタスポーツ演じる部長も良かっただけに、心底モヤモヤの残る作品となった。
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