SANKOU

MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらないのSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

タイムループものは同じシーンが何度も描かれるので、いかに観客を飽きさせないかというアイデアがとても重要だ。
今年観たタイムループものの『リバー、流れないでよ』も脚本が秀逸だったが、この映画も目のつけどころに感心させられた。
舞台となるのは小さな広告代理店のオフィス。
週末も社員がオフィスに寝泊まりしなければならないくらいに仕事の量が多いらしく、誰もが疲れた表情をしている。
主人公の吉川もプライベートは後回しで、月曜日の朝からプレゼンの準備に追われていた。
すると後輩の二人組から、自分たちが同じ一週間を繰り返していることを告げられる。鳩がオフィスの窓にぶつかる月曜日の朝が何度も繰り返されているらしいが、誰もがこのタイムループを夢の出来事だと思って忘れてしまうらしい。
吉川も最初は二人の話を信じなかったが、あまりにも二人が次に起こる出来事を予知するかのような言動をするので、次第に彼らの話に信憑性を抱くようになる。
そしてまた同じ月曜日が繰り返され…。
とにかくいつタイムループから抜けるか分からないために、吉川たちは目の前の仕事に全力で取り組むことは忘れない。
何度も同じ一週間を繰り返すことによって、それぞれの仕事の効率とスキルが上がっていくのが面白い。
そしてこの映画の面白さはいかに社員たちにタイムループを気づかせるかというところにある。
一番下っ端の村田はタイムループの原因が部長の身につけているブレスレットにあることを指摘するが、部長にタイムループを分からせるには上の役職の者の説得が必要だと告げる。
こうして吉川たちは順番に上司にタイムループの現実を受け入れされ、皆で協力して部長の説得にあたる。
そしてついに何度目かのタイムループを経て部長も現実を受け入れ、身につけているブレスレットを破壊する。
が、またしても鳩が窓にぶつかる同じ月曜日が繰り返される。
今まで蚊帳の外だった事務員の神田川が、実は一番初めにタイムループに気づいていたらしく、何度も皆にそれを気づかせようとして挫折したことが彼女の口から告げられる。
そして彼女はタイムループの原因は部長が諦めてしまった漫画家の夢にあることを指摘する。
彼らはタイムループを抜け出すために、部長が描きかけで放置していた漫画を完成させ、もう一度部長に夢を追いかけるように説得することを決める。
前半は小気味の良いコメディの感があったが、漫画の存在が明らかになってからは人生について考えさせられるような深いドラマが展開していく。
実は吉川は大手広告代理店への転職が決まっていたのだが、漫画の完成と仕事を両立させられず転職先の代理店からの信用を失いかけてしまう。
吉川はこのままタイムループから抜けられても自分の望む将来がないことに絶望し、もう一度一週間をやり直すことを皆に提案する。
彼女が憧れるデザイナーの一言がとても印象的だった。
彼女は吉川に、本当に出世したいなら自分のことだけを考えろと諭す。
しかし本当に自分のことだけを考えて掴んだ成功で幸せになれるのだろうか。
出世をした人間が幸せだとは限らない。
これが人生の難しいところだ。
そして適当人間だと思われていた部長が、実は自分の夢ではなく、社員ひとりひとりの生活を優先させるような人情深い人物であることが分かる。
しかし自分のことだけを考えても幸せにはなれないが、人のために自分の意志を殺してしまうこともまた幸せには繋がらない。
タイムループの現実と部長の漫画が巧みにリンクしているのに感心させられた。
漫画の中の主人公もまた納得出来ずに何度も人生をやり直していた。
誰もが幸せになれる結末を目指して、彼らは互いに手を取り合って同じ目標に向かって突き進む。
人生で起こることはどんなことでも意味があるというが、このタイムループも彼らにとって大きな意味があったのだろう。
タイムループによって彼らの絆は深まり、それぞれに本当にやりたいものを見つけることが出来た。
さて、実際にこの現実がタイムループしていたとして、果たして自分は気づくだろうかと考えさせられた。
SANKOU

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