海

スピリッツ・オブ・ジ・エアの海のレビュー・感想・評価

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「いって」と言うか、いっそ「いくな」と言うか、でも「いってもいいんだよ」と言われるから、今日も羽を仕舞ってあなたの元へ帰ります。退屈はやわらかい。熱狂はするどい。それは相互作用に過ぎないのに、あなたは、あなたの中にわたしを望みます。欠けていく月が突然ふくらめば、生活のリズムが突然みだれれば、何もかも今のままではいられないから、あなたは誰にも、自分にさえも、気づかれないほどの些細な変化を願います。いつか、あなたをコレットの『雌猫』に導きました。「自分以外の存在に憧れ、なりたいと思ったとき、本当にするべきなのは、真似ることじゃなく愛すること」と書き終えたあと、あなたはわたしのそばに横たわり、「猫を愛する人間は、すなわち猫になれる可能性を秘めている」と言い、起き上がり、書き加え、また横たわり、眠りにつきました。わたしは毎日、窓から鳥を見ます。なりたいからでなく、それがとても、大切なことのような気がするから。近づくとたぶん消えてしまう幻だから(鳥でなく、この心做しが)、窓の手前から、鳥を見るのです。いこうとしたらいけます。でもあなたの元へ帰ります。いつでもいけるから。そうして、いつまでもいかないかもしれないから。毎日、出かけていくあなたを見ています。わたしには、あなたがわかりません。でも、あなたに夢が必要なことはわかります。そしてそれを、信じる心を、わたしがあげられることもわかります。  あなたが起きるまえにこれを消しておかなくちゃ、言葉がわかることを知られては大変です。わたしは本当は、「わたし」でなく「ぼく」を使うべきだと気づきます。あなたの詩を毎日のように聞かされると、天使も猫もこうなるのです。ぼくのかけた魔法は、あなたが勝手に解くことはできません。だから安心して夢をみてください。安心してどこへでもいってください。何もかも終わったあとのさみしさには、やさしさが紛れているけれど、どうにもならないことに、どうにかなるよと言うくらいなら、両方抱きしめたがる今のあなたのままでいてください。抱かれるのはあまり好きじゃないけれど、抱こうとされるのは好きなのです。あなたの中で、ぼくは永遠です。信じることをわすれニャいように、あなたに夢をみせてあげます
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