【もしも昭和の学生が『傷物語』を作ったら】
U-NEXTにて。2022年作、12分の短編アニメ。
作者は実写の動きをトレースするロトスコープに拘っているらしい。ご本人のコメントに依ると“ロトスコープという表現手法が内包する「不気味さ」の印象を、人間の身体がもつ所作のグロテスクさと結びつけられないかという着想で制作しました。”…とのこと。
でもなあ…ロトスコープは身体のリアルを記号化する手法で、手描きのCGみたいなものじゃないか?で、本作のようなホラー体裁だと、その体裁の不気味さの方が上回ってしまうと思うのだけど。
デジタルで無機質な画面の中、ロトスコープはレトロな動きを醸し、昭和の自主映画的な味わいあり。あえて記号的なCGと組み合わせて、ミスマッチな面白さを出していますが、そこに鮮度はありますね。
しかし見ていると、このミスマッチは『傷物語』がもっとスマートにやってたよなあ…と連想してしまう。特に、白い地下鉄ホームで腕を失った女が血塗れでうねる…って、まるで同じ表象。その『傷物語I 鉄血篇』は2016年。時系列だと、この蟹の方がパクッたように見えてしまうが、どうなんだろう?
で、お話からは何も伝わって来ず、退屈。話が分かり難くても、例えば強烈な情念が醸されている…という映画なども在るけれど、本作はただ独り言を絶叫しているようで、見苦しく感じてしまう。そして、この叫びは黒坂圭太がよくやってたよなあ…とも連想してしまう。
やっぱり本作の男女より、阿良々木くんとキスショットの方がまだ、面白いと思うなあ。
<2024.3.18記>