旅するランナー

ムクシンの旅するランナーのレビュー・感想・評価

ムクシン(2006年製作の映画)
4.7
【アディバ・ヌールさん追悼上映】

これは素晴らしいジュブナイル映画でした。
この作品に出会わせてくれた、アディバ・ヌールさんとヤスミン・ アフマド監督に感謝です。
故人を偲ぶという形になってしまったのが、残念でなりません。

10歳の少女オーキッドの夏休みの思い出。
12歳の少年ムクシンとの淡い初恋が、瑞々しく描かれています。
冒頭の小学校のシーンから、流れるようなストーリーテリングで、物語が進んでいきます。
伏線回収もお見事です。

オーキッドの両親をはじめとして、周りのキャラたちも、とっても良い。
マレーシアの生活、文化、風習、人種、言語なども、きめ細かに織り込まれています。
アディバ・ヌールさんは「細い目」と同じお手伝いさん役です。
オーキッドだけでなく、僕たち観る者をも包み込む包容力。
彼女が歌う曲も、しみじみとしてイイ味出してます。

歌と言えば、使われる音楽も素敵なんです。
シューマン「トロイメライ」とニーナ・シモン「行かないで Ne me quitte pas」が流れるシーンの優しさは、映画史に残るでしょう。
こうして、マレーシアの偉大な二つの才能は、僕の心の中で永遠に生き続けます。