Jun潤

宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきましたのJun潤のレビュー・感想・評価

4.2
2024.02.04

予告を見て気になった作品。
邦題がパロディでだいぶ遊んでる印象が強めですが、予告を見ると朝鮮半島の南北対立をコミカルに描いていそうで、鑑賞の機会になかなか恵まれませんでしたが、ロングラン上映していることですし今回ようやく鑑賞です。

韓国の街中を舞う、一枚のロトくじ。
風に乗って、くじは南北の軍事境界線、韓国側にいるパク兵長の元に辿り着く。
翌日の当選発表を偶然目にしていたパクは、自分が手にしたくじが賞金およそ57億ウォンの1等当選くじであることに驚愕する。
除隊を間近に控え、賞金の使い方に想像を膨らませている最中、くじは再び風に舞ってしまう。
次の持ち主は、軍事境界線を越え、北朝鮮の上士ヨンホ。
韓国側の情報に精通している同僚兵士のチョルジンと共に当選くじであることを確認するヨンホだったが、換金は韓国でしか行えない。
北朝鮮からくじを取り戻したいパクと韓国で換金したいヨンホは、軍事境界線越しに対面を果たす。
パクもヨンホもくじの所有権を主張し、埒が明かないどころか互いの上官・カン、スンイルの知ることとなったため、南北両兵士たちは、非武装地帯の共同給水区域にて密約を交わす。
くじの引渡しと換金の条件になったのは、パクとヨンホの人質交換だった。
かくして、大金を掴み取るために敵国同士が手を取り合い、バレることも失敗も許されない作戦が動き出す。
しかし、彼らの行手を様々なトラブルが襲いかかるー。

こりゃあ韓国産コメディに完敗しましたわ。
てか鑑賞後に軽く調べたところマジで邦題しかパロディは無く、監督もキャストもパロディ元と共通していないという、日本の配給会社が完全に遊び倒した感じ。
いやしかしこれは邦題に釣られて正解だったというか、純粋な内容勝負に持ち込んでも全く見劣りしないどころか作品パワーでワンパンキメれるレベルですね。

少ない描写ながら軍事境界線を挟んだ南北双方の、ちょっとシュールめな緊迫感も伝わってきましたし、あくまでそれらを下地としたままで、愛国心や職業倫理も超えた金に対する欲望や夢への憧れのために結託する両兵士たちに繋げる流れもとても綺麗で、一切の無駄もなくテンポ良く作戦実行まで進んでいました。
作戦遂行時も、序盤のフリを効かせつつ、変にシリアスな過去や背景を描いてないからこそ愛着の湧くキャラクターたちの動きでもって新たな笑いも生み、笑わすところでバッチリキメにかかってきてくれたので、僕自身めっちゃ笑いましたし、久しぶりに良い意味で笑いに包まれていた劇場内を感じられました。

シリアスなサスペンスだったり、よく見るような展開などを考えると、気持ちのいい終わり方にはならないんじゃないかとか、そもそもこういう作品の気持ちのいい終わり方ってなんだ?とも思っていましたが、そもそもが拾っただけのくじだから全額チョロまかしたりもせず、かといって主人公たちに取り分が全然ないわけでもなく、コメディだからといってどちらかの国に感情が寄ってしまったり、せっかく大好きになったキャラクターたちの中で不憫な目に遭う人がいなかったりと、どこを向いても不安も心配もない、安心・安全なハッピーエンドで締めていたことも個人的には好印象です。

邦画と韓国映画というとお互いリメイクし合ったりしていますが、今作の場合は日本国内にこんな状況は無いだろうし、時代とかくじの設定とかを大胆に改““良””すればいけるかもしれないと思いつつ、ここまで振り切った話を果たして今の邦画界で上手く整えられる人がいるのかというところ。
しかしまぁ良い設定&キャラクターなので、舞台を変えてリメイクか、くじじゃないものを『不時着』させてシリーズ化など、想像が広がるのもまた良い作品の証左でしょうか。
Jun潤

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