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アイ・ケイム・バイのどのネタバレレビュー・内容・結末

アイ・ケイム・バイ(2022年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

ミスリードのうまい作品だと思った。主人公はトビーだと思いこんでいたので、割と序盤のほうでブレイク卿に捕まってもきっと生きているのだろうと思っていたものの、焼却炉で証拠隠滅をしているシーンでまさか一緒に燃やされトイレに流されていたとは驚いた。
おそらくトビーからトビーの母親に主人公が切り替わった際も、警察にコネを持っていて公権力で太刀打ちできないブレイク卿をなんやかんやトビーの母親が一杯食わせて息子も救出するのかと思いきや、直接的な描写はなかったものの、母親まで始末されるとは思わなかった。ブレイク卿が強すぎる。
ブレイク卿の狂気的犯行の動機もまた直接的に描かれているわけではないが、途中で自分の父親に対する語りだけでなんとなく動機は思い描けるので、そういった間接的な描写もうまいと思った。自分だったら思わずダラダラとブレイク卿の幼少期のシーンとか入れてしまいたくなりそうだが、あえて手短な語りだけに留めることで、よりブレイク卿の狂気というのが際立っていたように感じた。
この作品の大雑把なテーマは貧困層対権力階層だと思われる。だが、ブレイク卿がただのサイコではなく、立場が圧倒的に弱い移民を監禁及び暴行行為をしていたことがトビーにバレ、何度も警察が自宅にやって来るも完全な逮捕に至らず、釈放されるという流れから、この映画の舞台であったイギリスの社会構造は結局、ブレイク卿の父親の世代あるいはそれもよりも前から一貫して白人の特に高齢者男性であったことがうかがえる。結末はトビーの親友であったジェイがブレイク卿を倒し、彼の自宅にアイ・ケイム・バイと落書きすることで、トビーの遺志はジェイに受け継がれ、権力階層に一杯食わせてやったというスマートなものだった。
ジェイが救出に来た際、ブレイク卿が飼っている移民とトビー親子もいるかと思いきや、移民しかいなく、本当にあの時殺されてしまったのかという驚愕など、全体的に振り回されて楽しむことができたが、ただ警察が無能すぎるのが少し残念だった。どうせ警察はブレイク卿には手が出せないので、トビーの母親やジェイが屋敷に侵入して乱闘が予想されるシーンで、他作品だったら思わぬ助けやイレギュラーがあるかもしれないとハラハラするものだが、この作品は警察や助けが駆けつけることはないことがわかりきっているため、やられるしかない展開が読めるというのが少し残念だった。だが、実際に貧困層と権力階層が争うことになったら、当然権力階層の勝利は確定しているので、ある意味リアリティな作品だった。
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