あなぐらむ

拳銃は俺のパスポートのあなぐらむのレビュー・感想・評価

拳銃は俺のパスポート(1967年製作の映画)
4.4
皆さんご存知、和製ハードボイルド映画の金字塔。
小説原作だが出来上がった作品もまた、端正な文体の小説の様。藤原審爾はほかに「ある殺し屋」も原作。まさに殺し屋映画の巨匠である(「あの人は遠く」の原作もこの人)。

伝説のラストへと向かう過程にも無駄はなく、まるでパーツが嵌まっていく感覚。やはりフェティッシュな銃器描写は楽しい。こんな映画が日本で実現していたのが凄く悔しい、惜しい。
まぁ戦う前には穴掘っておけって事ですよ。ジェリー藤尾の唄が耳に残るんだよな。この人が唄う劇中歌どれもすげぇよな。

基本的には「待つ」話なので、モノクロ画面では若干、テンポ悪く感じるかもしれないが、これは野村孝のテンポだと思う。全然関係ないがテレビドラマ「火曜日の女」シリーズの「山峡の章」は凄い仕上りなので機会があればぜひ。全話野村監督が撮ってます。

キャストの話。ジョーさん、ジェリー藤尾のタランティーノも真似した二人の殺し屋は文句なし。小林千登勢は雷蔵の「赤い手裏剣」と同じようなポジション(こちらは大藪春彦原作)。
小林千登勢の元の男で鼻をかみ続けてる長身は江角英明、日活ロマンポルノで宮下順子の相手役ほか活躍。この映画辺りの縁があっての「ルパン三世」のパイカルなのかな。偉そうに言ってる割りにダンプであっさりやられる草薙幸二郎は後に村川透作品の常連となる(ダンプは「危いことなら銭になる」繋がりか)。榎木兵衛や長弘も出てて、ロマンポルノへの接続を感じないでもない。杉良太郎はまだまだ若い。

銃器描写、細かい所だがマガジンに装填してる時、スプリングのテンションを確認するのが好きだ。スプリングの強弱、リコイルスプリングはジャムの有無に直結するのだ。
なお有名な話ですが劇中ジョーさんはコルトではなくベレッタを使っています(セリフにもある)。
モノクロの画質もあって、大和屋竺や若松孝二の映画のテイストも感じられる。勿論「殺しの烙印」へとこれらは通じて行く(こちらはギャビン・ライアル「深夜プラス1」がベース)。

さて、ラストの銃撃戦って長谷部安春(セカンド助監督)が撮ったんだね。「俺にさわると危ないぜ」大好きなんだけど、フィルム回し過ぎたんだって。それで干されて野村組について、「拳銃は俺のパスポート」になった。
長谷部さんはやっぱり洋画好きみたいで、「必死の逃亡者」とかがアイデアにあったそうな。ベーさんは「みな殺しの拳銃」と併せて、短期間に非常に秀逸な銃撃シークエンスを二つこさえた事になる。これはやっぱべーさん凄いなと。横と縦の構図。
しかし脚本の永原秀一、4日で書いたのかよ。すげぇ。
なお、東映Vシネマ「ベレッタM92F 凶弾」(原隆仁)は本作のリメイク(だいぶ違うけど)。