故ラチェットスタンク

Pearl パールの故ラチェットスタンクのレビュー・感想・評価

Pearl パール(2022年製作の映画)
3.6
『Dancer in the Farm』

 テクニカラーな色彩設計。ドレスの鮮烈な赤、ベッタリと塗られた空の水色、モロコシ畑の黄と朱と緑のなんと眼福なことか。時間の遡及が畑に牛舎に家に、見違えるほどの瑞々しさを与える。
 
 懐古的で大仰なその振る舞いはそのままパールの若さ、もしくは彼女の理想と不可分だ。その若さと外部からの抑圧が元より秘めていたストレスに拍車をかけていく。食卓での独白が全ての抵抗を打ち消していく。内にも外にも逆らえない痛ましさ。とても無惨だ。結局嫌っていた母を抱擁しなければならない。感情とともに乱高下を繰り返す音楽のあけすけさがとても良かった。

 殺人大喜利のボルテージが高い。ジックリとした溜め。派手な発散。下へ打ち付ける雨と燃え上がる炎の対比のユニークさ。あるいは「後ろから追われること」、そして「それに気づいていること」の恐怖をねっとり長回しするゆとり。何もない道で転ぶ人がいて爆笑してしまいました。