このレビューはネタバレを含みます
前作よりも別の意味でパワーアップ。
登場人物も少数なので主人公のパールに焦点がずーっと合ってる感じ。
彼女の可愛らしさと異常性が交互に現れ前作の前日譚という何故ああいう事をする人物になったのかという答え合わせに似たワクワク感じがたまらない。
1918年という時代背景で前作とはカラーや雰囲気が全然違う。家も綺麗だし農場も空も美しい映像。
前作は悪魔のいけにえ等のホラーフィルムリスペクトで16ミリフィルムによる撮影で今作ではオズの魔法使いオマージュのテクニカラー撮影なので鮮やかさのトーンが違う。
前作と同じ画角で撮影して繋がりを彷彿とさせたり、華やかなダンスシーンがあったりして楽しい。ハエの音も印象的。
農家から出たい彼女のしがらみの元の病気の父、厳格な母がいて自由になりたい、ダンサーになる夢を叶えたいと純粋な思いが板挟みとなり狂気に走らせる。
映写技師の甘いささやきやダンスオーディションなど秘めていた夢が身近に迫って来るのもあいまって物語が加速していく。
腐っていく豚肉と比例しているかのようなパールの変容がメタ的。
しかしオズの魔法使いと違い彼女は旅に出るのを諦め恐ろしくも冷淡なモンスターになっていく。
義理の妹に今までの行いを全て吐露するシーンはワンカットで一人台詞で延々と述べるのだが絶妙なタイミングで涙が出たり、映像以上の本心とミア・ゴスの演技力の高さに驚いた。今作では脚本にも携わってるので力の入れようがわかる。
ダンスシーンも慰問団風で楽しいしダンスの振り付けも良かった。
深夜ではなく白昼堂々の犯行が後先考えられない彼女の抑えきれない感情を表していて興味深い。特にラスト2人。
ハワードが戦地から帰還した時の不気味で可哀想で色んな感情が無い混ぜになった笑顔の長尺のラストカットは凄まじかった。
ここでも涙のタイミング絶妙。
クレジットのフォントも昔の映画風で徹底してる。
3部作構想らしいので次回作が楽しみ。