ひとり深夜に一作目のB級感を求めて見始めたのに、いい意味で期待を裏切られた。これをただのホラー映画と侮ることなかれ。
生まれ落ちた家庭環境により偶然一でも必然一サイコキラーになってしまった少女・パールの悲しい物語。家族というものがいかに社会と断絶したものであるのか、またその始まりとしての恋愛が女性(母と娘)にとっては偶然的で、主体性なんてまったく効かないところで起こっているかを監督タイ・ウエストと主演ミア・ゴスとの脚本で描かれていた。その意味でミア・ゴスの演技が圧倒的だったんだろうし、特に戦争から帰還した夫を「こうなってしまった」と見つめるトラウマ級のラストはそんなテーマが最も現れたシーンだった。
三作目は一作目『X』で唯一生き残ったマキシーンの話とのことだが、次はどんなテーマとなるのか。ホラーの可能性を追求するジョーダン・ピールしかり、超A級の映画を撮ってしまったタイ・ウエストとミア・ゴスとのタッグの行方も気になって仕方がない。