クリーム

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしいのクリームのレビュー・感想・評価

3.8
ぬいぐるみと話す人達が、何を思いその行動をするのか、気になって手にした作品。アロマンティックであろう主人公が苦悩し、ぬいぐるみサークルの人達との交流を通し、自分を見つめるストーリー。これは、難しい。とても素敵な居場所、ぬいサーであるけど、関わり方次第では、もっと辛い方向へ向かってしまう危険性も感じました。考えさせられる良い作品でした。

恋愛をしたい気持ちが無い七森は大学に入学し、仲良くなった麦戸と言う友人とぬいぐるみサークルに入る。そこは、ぬいぐるみに話しかける人達のサークルだった。彼は、ぬいサーで活動しつつ、同サークルの白城と付き合ってみるのだが…。



ネタバレ↓



七森は異性の恋人がいる、一般的と言われる普通の男子に挑戦してみたくて白城と付き合う。だけど、やはり彼女に恋愛感情は持てず、2人は破局。
白城は、ぬいサーが居心地良いと思っているが、ずっとここにいては、駄目な事を理解し、現実社会との折り合いを付けようとしている女の子。
最初に友達になった、麦戸は、痴漢されている人を目撃し、何もしてあげられない自分が悲しくなって、学校に来なくなる程悩む女の子。
ぬいサーの人達は、社会に対してままならない気持ちを抱え、ぬいぐるみと話す事で、その痛みや葛藤に対処しようとしている。
ある部員は、自分が話した事で誰かを傷付けたくないから、ぬいぐるみに話すと言う。
七森は、地元の友達にからかわれた事をきっかけに引きこもり、麦戸が彼を尋ね、お互い自分の悩みを吐露して、前向きになって行き、4月に新入部員が来て終わる。

ぬいサーの人達は、各々違う事で悩んでいるが、皆、生き苦しさで窒息しそうに見えた。それでも1人でいるよりは、良いのだと思うし、あんなサークルがあっても良いと思うけど、皆がネガティブに影響しあったらどうなるのだろう?
特に七森と麦戸が、お互い励まし合ってポジティブ思考の時は良いが、2人でネガティブ思考になった時、想像したら繊細過ぎて怖いと思いました。
長い人生を考えたら、心が悲鳴を上げている事を放置してはいけない気がする。最近増えている心の病の一辺を覗いた気がします。良作でした。
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