柴芋

美と殺戮のすべての柴芋のレビュー・感想・評価

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)
4.0
オピオイド鎮痛薬を題材にした映画はベンイズバックがあるし、この映画で出てくるサックラー家のような一族はドラマ戦慄の絆にも出てきた。そして美術館での抗議活動もニュースで見た事あったけど、ナンゴールディンの歩んできた道と重ね合わせて見ると、こちらに入ってくる濃度が全然違う。あの抗議パフォーマンスはすごくかっこいいし、アートでもあって、アートってやっぱり社会的だ。彼女の撮る写真は被写体の生命力が違うというか、本物が写っている。包み隠しもしないそこに生きている人間。だからパワーが他と比べ物にならない。エイズによるマイノリティ差別も、今回の利己主義に走った薬害も、それを許してはいけない気持ちが勝ち取った結果だから、アメリカの成功体験の積み重ねが今を作っていて羨ましい。最後の両親の映像とナレーションを心に残しておきたい。人間を育てるのに向いていない人間もいる。家庭を持って子育てをするのが当たり前な社会の犠牲者とも言えるのでは。薬を常用する人への偏見についても初めて気付かされた。間接的な人殺しが発生する原因が、少しずつ見えてくる希望もある。
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