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美と殺戮のすべてのCUのレビュー・感想・評価

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)
3.6
写真家であるナン・ゴールディンの活動とオピオイド中毒に焦点を当てたドキュメント作品だと思い観に行ったのだけど、オピオイドにはそれほど触れず、ナン・ゴールディンの生い立ちと活動を中心に構成されたものだった。オピオイドに興味があったもので、ちょいと残念。

ただ、サックラー一家の悪事を暴き、破産に追い込み、美術界隈からその名を排除したのは凄い偉業で、いつだって問題から逃げないナン・ゴールディンの執念があればこそなのだろう。問題から逃げないというのは、18才で自死した姉から学んだことであり、その死がナンの人生に多大な影響を与えたとのこと。

作品の最後の方で姉の精神疾患に関する真実がナンの口から語られるが、その語り口は重く、きっと彼女の中でその出来事は生涯消化できないことであるのだろう。

また、あのようなことがなければ、きっと姉は今でも生きていたというのは、オピオイド中毒で亡くなった多くの人々に重なるものであり、そう考えるとサックラー一家を失脚させたのは、ナンの復讐でもあったと言える。

生涯抱えていかねばならない想いがナン・ゴールディンを突き動かしている。オピオイド中毒に関するナン・ゴールディンとP.A.I.Nの活動は現在も続いている。
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